海王星のトロヤ群

海王星のトロヤ群

海王星のトロヤ群とは、海王星とほぼ同じ軌道を、同じ周期で公転する小惑星の集団です。これらの小惑星は、海王星と太陽の重力が均衡するラグランジュ点、特に海王星の前方約60度（L4点）と後方約60度（L5点）に集まっています。2024年11月現在、31個の海王星トロヤ群が確認されており、そのうち27個がL4点、4個がL5点に位置しています。

発見と探査

海王星のトロヤ群の最初の発見は2001年で、L4点に位置する2001 QR322が確認されました。その後、2005年には軌道傾斜角が大きい2005 TN53が発見され、トロヤ群が厚い雲状に分布している可能性が示唆されました。2010年には、初のL5トロヤ群である2008 LC18が発見され、観測の困難さにもかかわらず、L5領域にもL4領域と同程度のトロヤ群が存在する可能性が示されました。

探査機による観測は、ニュー・ホライズンズが冥王星へ向かう途中に、海王星のL5領域を通過する機会がありましたが、データ通信の制約から観測は実施されませんでした。

ダイナミクスと起源

海王星のトロヤ群の軌道は非常に安定しており、太陽系の年齢にわたって存在し続けると考えられています。これらの小惑星は、ラグランジュ点から最大30度程度振動することがありますが、大きく外れることはありません。もし軌道を外れた場合は、ケンタウルス族に似た軌道に移行すると考えられます。

海王星のトロヤ群の起源は、その場での形成ではなく、海王星が現在の軌道に移動する過程で捕獲されたと考えられています。軌道傾斜角が大きいトロヤ群の存在は、この説を裏付ける有力な証拠となっています。また、L5点とL4点のトロヤ群が同程度に存在することは、捕獲時にガス抵抗の影響が少なかったことを示唆しています。

これらのトロヤ群は、初期の太陽系において、惑星の移動や軌道の変動を研究する上で重要な手がかりとなります。

色と組成

初期に発見された海王星のトロヤ群は、同じような色をしており、エッジワース・カイパーベルト天体よりもわずかに赤みがかっています。これは、ケンタウルス族や木星のトロヤ群、惑星の不規則衛星などと似た特徴であり、これらの天体が共通の起源を持っている可能性を示唆しています。

ただし、海王星のトロヤ群は暗いため、分光観測は難しく、表面組成についてはまだ詳細がわかっていません。

メンバー

海王星のトロヤ群のサンプル数はまだ少ないですが、高軌道傾斜角のトロヤ群も発見されていることから、実際にはより多く存在すると考えられています。高軌道傾斜角のトロヤ群は、低軌道傾斜角のトロヤ群に比べて約4倍多く存在する可能性が指摘されています。L4点には、半径40km以上の天体が200個から650個存在すると推定されており、これは木星のトロヤ群よりも大きい天体が5倍から20倍も多いことを示唆しています。

一方で、サイズの小さい天体は少なく、すぐに砕けてしまうと考えられています。L5点には、L4点と同程度のサイズの大きい天体が存在すると推定されています。

既知の海王星のトロヤ群には、以下のようなものがあります。

(385571) Otrera (L4)
(385695) Clete (L4)
(316179) 2010 EN65 (L4)
(527604) 2007 VL305 (L4)
(530664) 2011 SO277 (L4)
(530930) 2011 WG157 (L4)
2012 UV177 (L4)
2012 UD185 (L4)
2013 KY18 (L5)
2013 RL124 (L4)
2013 RC158 (L4)
2013 TZ187 (L4)
2013 TK227 (L4)
2013 VX30 (L4)
2014 QO441 (L4)
2014 QP441 (L4)
2014 RO74 (L4)
2014 SC374 (L4)
2014 UU240 (L4)
2014 YB92 (L4)
2015 RW277 (L4)
2015 VV165 (L4)
2015 VW165 (L4)
2015 VX165 (L4)
2015 VU207 (L4)

注意点

(613100) 2005 TN74と(309239) 2007 RW10は、かつて海王星のトロヤ群と考えられていましたが、その後の観測により、それぞれ海王星と3:5の共鳴軌道を持つ天体、海王星の準衛星であることが判明しました。

関連事項

ニースモデル

外部リンク

* Planetary Trojans - the main source of short period comets? (arXiv:1007.2541 : 15 Jul 2010)

もう一度検索