海軍 (映画)

映画『海軍』の概要

『海軍』は、日本映画の中でも特に歴史的な背景を持つ作品であり、1943年に松竹により、1963年には東映によってそれぞれ制作されました。本作品は、原作として岩田豊雄の小説を基にしており、両作品は異なるアプローチで同じテーマを扱っています。

物語の主人公とその背景

両作品の主人公である谷真人は、真珠湾攻撃で九軍神の一人となった海軍少佐、横山正治をモデルにしています。横山は鹿児島県達鹿児島市出身であり、家庭は米穀商を営んでいました。彼の詳細な経歴は、学生時代に成績優秀であり、常に上位に位置していたこと、また陸海軍関係の学校へ進む「軍人組」に加入したことからも伺えます。彼は中尉から二階級特進し、その人生は戦や友情、家族との絆に彩られています。

また、物語には、横山の親友をモデルとした牟田口隆夫が登場し、彼は横山の親友3人の特性を融合したキャラクターとして描かれています。両作品では、鹿児島市や江田島でのロケーション撮影が行われ、当時の風景や風俗がリアルに描写されています。

松竹製作版 (1943年)

松竹による1943年版は、大東亜戦争2周年を祝う映画として、海軍省が後援し、全15巻のフィルムで構成された白黒映画です。谷真人の戦死を描くこの作品は、国家観や家族愛、友情を通してその人生を描写しています。キャストには、山内明や志村久が主演として名を連ね、家族や友人たちの道程が描かれました。

撮影は松竹太秦撮影所で行われ、作品はVTR方式で販売されました。工作を担当したスタッフの中には、著名な名前が数多くあり、特撮にも工夫が凝らされています。また、長らく存在が不明だったフィルムは後に発見され、鹿児島の風景を映し出した貴重な記録となっています。

東映製作版 (1963年)

1963年版の東映作品では、主人公の配役変更で名を馳せた北大路欣也と千葉真一が主演しています。この版では、谷真人が士官学校に進む過程や、寄せる友愛が描かれ、恋愛要素も取り入れられています。ストーリー展開やキャラクターの成長が強調され、現代劇の要素を取り入れることで新しい客層を狙った作品となりました。

撮影は東映東京撮影所で行われ、日本映画では珍しいシネマスコープ形式での制作が特徴です。その結果、従来の年代層だけでなく、若い世代の視聴者にもアピールすることを目指しました。

結論

『海軍』は、2つの異なる時代背景を考慮しつつ、友情や戦争の現実を描写した日本映画です。松竹と東映によるそれぞれのアプローチが、時代を超えて観客にメッセージを伝える作品としての価値を持っています。また、戦争というテーマに対する深い洞察が求められる中で、物語は多くの人々の心に沿うものであり続けているといえるでしょう。

もう一度検索