海軍航海学校

海軍航海学校

海軍航海学校は、大日本帝国海軍において、艦船の運用に不可欠な航海術、操艦術、光学通信術、天文観測術、気象観測術の専門家を育成した教育機関です。海軍砲術学校や海軍水雷学校の修了生を対象とし、普通科、高等科、特修科、専攻科を設置していました。特に、観測術の教育は1944年7月に茨城県阿見村に増設された分校で行われましたが、1945年3月には海軍気象学校として独立しました。

概要

海軍にとって、各種航海術は軍人が習得すべき基礎技術と認識されていました。航海術の進歩は、海軍全体の能力向上に繋がると考えられ、一部のエキスパートだけでなく、全体的な技能の底上げが重視されていました。そのため、航海術の高等教育は推進され、新たな技術は海軍全体で共有されました。士官を養成する海軍兵学校では、実習船として旧式の機帆船を活用し、生徒の実習教材としていました。この伝統は、後の航海術練習艦にも引き継がれました。一方、兵や下士官には、各鎮守府に設置された海兵団ごとに実習船が用意されていました。

しかし、航海術や光学信号術に加えて、遠洋航海に必要な天文観測術、安全な航行に不可欠な気象観測術、潮流・潮汐の観測術、さらには敵地強行測量術などの専門技術が必要とされるようになりました。海軍大学校に航海科が設立された後、1934年に海軍航海学校が設立されました。他の術科学校とは異なり、当初は普通科を設けず、高等科に相当する中堅士官やベテラン下士官のみを受け入れていました。普通科が設けられたのは、日中戦争による増員のため速成教育が必要になった1940年以降のことです。

無線通信は海軍通信学校が担当し、航海学校では発光、手旗、旗流、発煙、信号弾などの光学信号と、警笛、霧笛、ラッパなどの発音信号を扱いました。

沿革

• - 1934年4月2日：海軍砲術学校射撃場跡に海軍航海学校が開校。練習特務艦「富士」が使用されました。
• - 1944年7月1日：茨城県阿見村に分校が設立されました。
• - 1945年3月1日：阿見の分校が海軍気象学校として独立しました。
• - 1945年6月20日：海軍気象学校が閉校しました。
• - 1945年7月15日：海軍航海学校が閉校し、繰上げ修了者は特攻戦隊に配属されました。

歴代校長

• - 大田垣富三郎 少将：1934年4月1日 -
• - 小池四郎 少将：1935年11月15日 -
• - 茂泉慎一 少将：1937年12月1日 -
• - 田結穣 少将：1940年11月15日 -
• - 阿部嘉輔 少将：1942年4月10日 -
• - 三川軍一 中将：1943年4月20日 -
• - 浜田浄 少将：1943年9月15日 -
• - 木村進 少将：1944年12月19日 - 1945年5月1日

海軍航海学校は、太平洋戦争の激化とともに、その役割を終えることになりましたが、そこで培われた航海術や観測術の知識は、後の海上自衛隊にも受け継がれたと考えられます。

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