海野一幸

海野一幸：ヴァンフォーレ甲府を救った男

海野一幸（うみの かずゆき）は、1946年1月1日生まれの実業家。山梨日日新聞の記者、山梨放送の取締役を経て、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ（ヴァンフォーレ甲府）の社長、会長、最高顧問を歴任しました。また、Jリーグ理事としても活動しました。

経歴

山梨県出身の海野氏は、山梨県立日川高等学校、東京農業大学を卒業後、海外留学も経験。1970年に山梨日日新聞に入社し、記者としてキャリアをスタートさせました。記者時代には、政界の有力者であった金丸信の番記者を務めるなど、その才能を発揮。1991年には同社の取締役編集局長に就任しました。

その後、山梨放送取締役、アドブレーン取締役などを経て、2001年にヴァンフォーレ山梨スポーツクラブの代表取締役社長に就任。2012年からは代表取締役会長を務め（2016年からは「代表」の肩書が外れる）、2020年4月1日に取締役会長を退任し、最高顧問に就任しました。2023年2月には、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブの全役職・肩書を退任しています。

ヴァンフォーレ甲府の再建

海野氏がヴァンフォーレ甲府の社長に就任した当時、クラブは深刻な経営危機に瀕していました。J2に所属していたものの、スポンサー収入や入場者収入が伸び悩み、多額の債務超過を抱えていたのです。親会社である山日YBSグループも、クラブの清算を検討していました。

そんな状況下で社長に就任した海野氏は、当初、事実上の左遷だと感じ、激しく抵抗したと言います。しかし、クラブの存続を願う山梨県庁の担当者や、山日YBSグループの社長からの説得を受け、「とにかくやるべきことをやるしかない」と考えを改め、クラブの再建に尽力することを決意しました。

海野氏はまず、徹底的なコスト削減に取り組みましたが、既に限界まで切り詰められていたため、抜本的な解決には至りませんでした。そこで、広告代理店での経験を生かし、スポンサー収入の増加に注力。県内企業への積極的な働きかけや、ユニフォームのクリーニングや選手寮の清掃を無償で行ってくれる企業を探すなど、様々な手を尽くしました。

また、クラブサポーターの獲得にも力を入れました。選手を地域のイベントやボランティア活動に積極的に参加させ、地域住民との交流を深めました。さらに、各自治体や企業を回り、ホームゲームの抽選会景品を提供してもらうなど、観客を楽しませるための工夫を凝らしました。その結果、観客動員数やクラブサポーター数は増加し、クラブはJリーグ参入以来初めての単年度黒字を達成。ヴァンフォーレ甲府は存続の危機を脱しました。

ピッチ看板の鬼

クラブの存続が決定した後も、経営は依然として厳しい状況が続きました。そこで海野氏は、ピッチ看板の掲出料を安く抑え、数を増やすという薄利多売の作戦に出ました。ピッチ看板だけでなく、横断幕や走り幅跳びの砂場、さらには怪我人を運ぶ担架の裏まで広告スペースとして活用。その徹底ぶりから、サポーターの間では「ピッチ看板の鬼」と呼ばれるようになりました。

海野氏の就任以降、ヴァンフォーレ甲府は広告料収入、クラブサポーター数、平均観客動員数を着実に増やし、経営状況は大きく改善しました。J1昇格も果たし、Jリーグ理事として他のクラブの経営危機問題にも関与するなど、その手腕は高く評価されました。

現在

海野氏は、ヴァンフォーレ甲府の社長、会長を経て、現在は最高顧問を務めています。また、一般社団法人ヴァンフォーレスポーツクラブ代表理事、山梨県サッカー協会副会長、日本サッカー協会アドバイザリーボードなど、様々な役職を兼任し、山梨県のスポーツ振興に貢献しています。2023年に喜寿を迎えたのを機に、ヴァンフォーレ関連の役職からは引退し、協会関連の業務に専念する意向を示しています。

東京農業大学客員教授、同大学評議員も務めるなど、教育分野でも活躍しています。

受賞歴

東京農業大学経営者大賞 (2006年)
日本プロスポーツ大賞功労賞 (2016年)
* 山梨県政功績特別感謝状 (2018年)

海野一幸氏は、経営手腕と情熱でヴァンフォーレ甲府を救い、地域に貢献した人物として、多くの人々に尊敬されています。

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