涙のパーティー

涙のパーティー

チューリップの「涙のパーティー」は、1985年10月19日にリリースされた通算29枚目のシングルです。この楽曲は、同年8月31日に発表されたアルバム『I Like Party』からのリカット形式で登場しました。実際この作品は、チューリップの第2期における最後のシングルに位置づけられていますが、その背景にはメンバーの脱退という厳しい現実が横たわっています。

当時のチューリップは、財津和夫を中心にしたメンバー構成でしたが、安部俊幸、姫野達也、伊藤薫の三人は、楽器のデジタル化やポップスタイルへの反発から、アルバム制作の夏頃に脱退を決意しました。彼らは「アイ・アイ・アイ」と「サマー・レイン・ラプソディ」を製作した後、メンバーとしての役割を終えました。これらの楽曲は、6月29日にシングルとして発表され、三人はその後の活動から姿を消します。

メンバーの離脱に直面した財津は、突然の窮地に立たされます。彼は既にサポートメンバーとして参加していた松本淳やセッションミュージシャンの鳥山雄司らと共に、アルバムの完成に向けて奮闘しました。多重録音を用いてコーラスを自ら演奏するなど、新たな制作スタイルを余儀なくされた彼の姿勢は、その後のチューリップにとっての新たな道筋を示唆していました。財津は後に、この時期を「2.5期」と名付けました。

アルバム『I Like Party』の発売と同時に、安部ら三人の脱退は正式には公表されませんでしたが、ジャケットデザインには財津一人だけが写るなど、過去のメンバーとの関係を暗に示していました。このアルバムには、タイトル曲になるはずだった「I Like Party」は収録されておらず、全体的に暗い曲調が多かったため、明るい内容の「I Like Party」はお蔵入りとなったと考えられています。

その後、オリジナルメンバーでのライブ「I Like Party」は、丹野義昭とサポートメンバーによって新たに再出発し、同年9月からスタートしました。このライブでは、財津自らが三人の脱退を公表しながら、楽曲「涙のパーティー」も披露されました。そのジャケットにはシャンパングラスを持った手のイラストが描かれ、スケジュールやメンバー脱退の告知文も収められています。

契約上の理由から三人の正式な脱退が発表されたのは、ライブ終了後の1986年3月13日でした。その後、彼らはオールウェイズを結成することになります。興味深いことに、1989年にはチューリップの解散ライブ『FINAL Tour Well』において、姫野、安部の二人がゲストとして参加し、この「涙のパーティー」を再度演奏しました。2022年時点で、この曲のライブ演奏はこの公演が最後となっています。

楽曲の内容は、一人でシャンパンを飲む男の悲しみを描写しており、上記の「I Like Party」とは対照的なテーマが浮かび上がります。コーラス部分には財津による多重録音が用いられ、聴き手に切ない響きを届けます。シングルには、「涙のパーティー」、そして「ハーバー・ヴュー・ホテル」が収録されています。

この曲は後の第3期のライブでも定番曲となり、サポートメンバーによるギターソロが聴きどころの一つとなっています。チューリップの続く歴史においても、これらの作品は影響力を持ち続けており、ファンの間でも愛される楽曲として親しまれています。

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