淡路剛久

淡路 剛久

淡路 剛久（あわじ たけひさ）は、1942年（昭和17年）1月1日に生まれた日本の著名な法学者です。専門分野は民法および環境法に及び、長年にわたり立教大学の教壇に立ち、現在は同大学の名誉教授の称号を有しています。また、法学者の野澤正充氏を教え子に持つなど、後進の育成にも尽力しました。学問研究に加え、現代社会の様々な問題に対し積極的に発言し、特に「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人としても名を連ねています。

学歴と職歴

淡路氏の学究生活は、1964年（昭和39年）3月に東京大学法学部を卒業したことから始まりました。同年4月には、東京大学法学部の助手に着任し、高名な川島武宜教授の指導のもと、研究者としての第一歩を踏み出しました。その後、1967年（昭和42年）4月に立教大学法学部に専任講師として移り、1969年（昭和44年）4月には助教授、1976年（昭和51年）4月には教授へと昇任しました。長らく立教大学で教鞭をとる中で、2004年（平成16年）4月からは同大学の法務研究科教授も兼任しました。2007年（平成19年）3月に立教大学を定年退職した後も、同年4月より早稲田大学大学院法務研究科の教授として迎えられ、2012年（平成24年）3月に同大学を定年で退くまで、研究・教育活動を続けました。

研究分野と主要著作

淡路氏の研究の中心は民法、中でも不法行為法や債権法といった分野にありましたが、特に公害問題や環境問題といった現代社会が抱える課題に対する法的アプローチにおいて、先駆的な業績を残しました。初期の代表作には、『公害賠償の理論』や『スモン事件と法』があり、環境法という分野が確立される以前から、民法学の手法を用いてこれらの問題を深く分析しました。また、『連帯債務の研究』や『債権総論』といった民法基本書も手掛け、広い視野からの民法研究を展開しました。さらに、環境権の概念を論じた『環境権の法理と裁判』や、『開発と環境』など、環境法分野における理論的支柱となる著作を多数発表しています。

多くの共著や編著も手掛けており、『公害・環境判例百選』や『環境法』（阿部泰隆氏との共編著）、『環境法判例百選』（大塚直氏、北村喜宣氏との共編著）は、この分野を学ぶ学生や実務家にとって不可欠な文献となっています。また、『環境法辞典』の編集代表を務めるなど、環境法学の体系化と普及に貢献しました。

社会的活動

淡路氏は、学術研究の枠を超えて、多岐にわたる社会的活動に精力的に参加しました。学会活動においては、日本交通法学会理事、日本私法学会の監事および理事、日仏法学会理事、日本法社会学会理事、国際人権法学会理事、環境経済・政策学会理事、そして環境法政策学会の理事および事務局長など、要職を歴任し、関連分野の発展に貢献しました。また、日本環境会議の理事および理事長としても活動し、環境問題に関する政策提言や啓発活動に従事しました。

行政や公的機関における活動も非常に広範です。東京都消費生活対策審議会では委員、部会長、会長として消費生活行政に深く関与し、東京都消費者被害救済委員会でも委員、会長を務めました。法務省の司法試験第二次考査委員を長期間務め、法曹界の人材育成にも貢献しました。文部省（現在の文部科学省）の大学設置・学校法人審議会専門委員や日本ユネスコ国内委員会調査委員、神奈川県環境審議会特別委員、世田谷区の消費生活審議会会長や環境審議会委員、埼玉県戦略的環境評価技術委員会小委員会委員、人事院国家公務員採用Ｉ種試験委員など、その活動範囲は多岐にわたります。日本学術会議においては、第20期会員および法学委員会委員長を務め、学術政策の形成にも重要な役割を果たしました。

これらの活動を通じて、淡路氏は民法学、環境法学の発展に寄与するだけでなく、現代社会が直面する公害、環境破壊、消費者被害といった喫緊の課題に対し、法の専門家として解決に向けた理論的基盤の構築と実践的な提言を行い、社会正義の実現に貢献し続けています。

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