深北緑地

深北緑地（ふかきたりょくち）

大阪府の大東市と寝屋川市にまたがる広大な敷地に広がる深北緑地は、大阪府が管理する多目的遊水地として整備された都市公園です。その面積は約41ヘクタールにも及び、普段は地域住民や訪問者の憩いの場として親しまれていますが、その本質的な機能は、寝屋川水系の治水対策における重要な役割にあります。別名「寝屋川治水緑地」とも呼ばれるこの場所は、洪水を防ぐための施設と、人々のレクリエーションや交流の場という、二つの顔を持っています。

治水と公園の共存

深北緑地の整備は、1978年に都市計画が決定されたことから始まり、1981年にはその一部が供用を開始しました。この土地は、西側を寝屋川、北側を江蝉川、南側を権現川という三つの河川に囲まれた低地に位置しています。この地理的な特性を活かし、大雨によってこれらの河川が増水した際に、余分な水を一時的に緑地内に貯め込むことで、下流地域への洪水被害を軽減する仕組みが構築されています。

公園の周囲は、寝屋川の堤防とほぼ同じ高さの強固な堤防で囲まれています。しかし、河川に接する堤防の一部は、意図的に周囲より低く設計された「越流堤」となっています。これは、計画的な増水時に、この越流堤を越えて水が緑地内へと流れ込むようにするための工夫です。緑地内部はさらに三つのゾーン（A、B、C）に区切られており、水はまずAゾーン、次にBゾーン、そしてCゾーンへと段階的に貯留される構造になっています。これにより、水害リスクに応じて貯留範囲を調整することが可能です。三つのゾーンを合わせた有効貯水容量は146万立方メートルにも達し、これは大阪マルビル約16杯分に相当する量です。貯留した水は、水位が下がった後、緑地の南西に設けられた寝屋川排水門を開放してゆっくりと排水されます。初めて緑地内に水が流れ込んだのは1982年8月で、2019年1月までに合計19回の灌水が記録されています。特に1999年と2004年には、最も奥のCゾーンまで水が到達するほどの大規模な貯留が行われました。

多様な施設を備える公園エリア

深北緑地内の施設は、冠水する頻度によって区切られた三つのゾーンに配置されています。それぞれのゾーンは、異なる特色を持っています。

水辺のゾーン（Aゾーン）

公園の西側、寝屋川に最も近いエリアです。増水時には比較的早い段階で冠水することが想定されています。

深野池: 北側半分を占める大きな池で、越流水勢を弱める役割も担います。普段は白鳥やカモをはじめとする多くの野鳥が生息しており、鳥獣保護区に指定されているため釣りは禁止です。
南側貯水池: 深野池に続くエリアで、寝屋川排水門に繋がっています。こちらは釣りが許可されています。
その他の施設: 自由広場（BMXやマウンテンバイクコースとして利用可）、第1BBQ広場、レンコン畑、ゆめ畑、残念石などが点在しています。

ふれあいゾーン（Bゾーン）

公園の北側に位置し、寝屋川市内に属するエリアです。Aゾーンよりも冠水頻度は低いとされています。

芝生広場: 広々とした芝生が広がり、ピクニックなどに最適です。
桜の園: 約25種の桜が植えられており、春には美しい花を楽しむことができます（公園全体では約1100本の桜があります）。
遊具広場: 恐竜広場やとりで広場など、子どもたちが楽しめる遊具が充実しています。
水辺のエリア: 木製デッキや円形花壇が配され、落ち着いた雰囲気です。
波の広場: スケートボードやローラースケート、マウンテンバイクなどが楽しめるスペースです。
その他の施設: 第2BBQ広場、有料BBQ広場、第二駐車場などがあります。

スポーツゾーン（Cゾーン）

公園の東側、大阪外環状線に面したエリアです。三つのゾーンの中で最も冠水頻度が低いとされ、本格的な運動施設が集中しています。

運動施設: 軟式野球場、テニスコート、球技広場などが整備されています。
ドッグラン: エリアの最南端には、犬を自由に遊ばせられるスペースが設けられています。
その他の施設: ロケットの形をした遊具があるロケット広場、管理事務所・売店、寝屋川治水緑地の歴史を記した顕彰碑、第一駐車場などがあります。

アクセス

深北緑地へは、車でも公共交通機関でもアクセス可能です。車の場合は、国道170号（大阪外環状線）の深北遊水池東交差点または河北東交差点を曲がるか、大阪府道21号八尾枚方線の江端交差点を東へ進むルートがあります。公園内には第一駐車場と第二駐車場があり、合計642台収容可能ですが有料です。公共交通機関を利用する場合、JR学研都市線の野崎駅または四条畷駅から徒歩約15分、または京阪本線の萱島駅や寝屋川市駅から「ねやbus」に乗車し、深北緑地停留所で下車するのが便利です。

治水施設としての重要な役割を果たしながら、人々に豊かな自然と多様なレクリエーションの機会を提供する深北緑地は、地域の安全と暮らしに深く根差した存在と言えるでしょう。

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