深野池

深野池：古の巨大な池の記憶

深野池（ふこのいけ、ふこうのいけ）は、中世から江戸時代にかけて、現在の大阪府寝屋川市南部、門真市東部、大東市中央部、東大阪市北部、四條畷市西部一帯に広がっていた広大な池です。その名は、現在では深北緑地公園内にある人工池に残されています。

深野池の歴史

古代から中世へ

縄文時代、大阪湾は現在の大阪平野の奥深くまで入り込んでいました。しかし、淀川水系や大和川水系からの土砂の流入により、徐々に縮小し、淡水湖である河内湖へと姿を変えます。さらに時代が進み中世になると、河内湖は北東側の深野池と南西側の新開池という二つの大きな池に分かれました。

深野池には、南側から大和川の分流である吉田川と恩智川、北側から寝屋川、そして生駒山系を源とする川が流れ込んでいました。池の水は、新開池を経由して大和川、さらに淀川へと流れていました。

中世には、深野池の中に島があり、そこには三箇城が築かれていました。戦国時代には、三好氏の本城である飯盛山城の支城としての役割も担っていました。

江戸時代初期の深野池

元禄2年（1689年）に貝原益軒が著した紀行文『南游紀行』には、当時の深野池の様子が詳細に記録されています。それによると、深野池は南北に約8km、東西に約4kmと広大で、湖のような景観を呈していたようです。池の中には三箇という村がある島があり、漁家が70～80戸ほど生活していました。島では漁業や農業が営まれ、鯉、鮒、鯰、蓮、菱などの豊富な水産資源が獲れました。漁獲された魚介類は大坂で販売され、蓮や菱は食用や加工用として利用されていました。深野池の周辺には約42もの村が存在し、池の水は大和川へと流れていました。

干拓と新田開発

宝永元年（1704年）の大和川の付け替え工事によって、大和川水系の流れが深野池に流れ込まなくなり、水位が低下しました。その後、真宗大谷派の僧侶である光性や難波別院の僧侶・門徒を中心に、新田開発が行われました。干拓によって生まれた新田は、河内屋北新田、深野北新田、三箇村新田、尼ヶ崎新田、深野南新田、横山新田、御供田新田、河内屋南新田などと名付けられ、現在もその一部は地名として残っています。

深野池に流入していた寝屋川は、池の跡地の西側を北から南へと流れ、東から流れるいくつかの川と合流し、南西部で恩智川と合流するようになりました。これにより、深野池は完全に干拓され、水田へと姿を変えました。

現代に残る深野池の記憶

深野池が干拓された後、大東市中部一帯は土地が低く、寝屋川水系の河川が合流するため、大雨のたびに浸水被害に見舞われてきました。特に1972年（昭和47年）の水害は甚大で、治水対策の不備が指摘される事態となりました。

このような水害を根絶するため、遊水地として深北緑地が建設されることになり、1981年（昭和56年）に完成しました。緑地内には、寝屋川からの越流水を減勢するための人工池が設けられ、「深野池」と名付けられました。この人工池は、かつての深野池がそのまま縮小したものではなく、新たに作られたものです。

深野池は、その姿を大きく変えましたが、地名や公園の名として、その記憶は今も受け継がれています。かつての広大な池の面影を偲びながら、深北緑地を訪れてみてはいかがでしょうか。

参考資料

『角川日本地名大辞典 27 大阪府』 角川書店。
大東市教育委員会 編『大東市史』1973年。

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