深溝城

深溝城の歴史と現状

深溝城（ふこうずじょう）は、愛知県額田郡幸田町深溝にかつて存在した城で、戦国時代から江戸時代初期において重要な役割を果たしていました。この城の築城時期については諸説あり、大庭氏によって寛喜3年（1231年）または正慶元年（1332年）に築かれたとされていますが、明確な築城年代は不明です。

深溝城は、松平信光や松平忠定の手に渡ったと言われていますが、その正確な経緯は記録に乏しく、当時の文献である『三河物語』や『東照宮御実紀』には大庭氏や深溝城の奪取に関する記載は見当たりません。この時期の記録から、松平氏がこの城を拠点とする以前の状況は不明であり、謎に包まれています。

『宗長日記』には、大永6年（1526年）の記録として「松平大炊助宿所連歌。沢のうへの山たちめぐる春田かな此所の様なるべし。」とあり、松平氏が深溝周辺で活動していたことが示唆されています。また、『三河物語』の三河一向一揆においても、松平氏が登場し、深溝地域の影響力を示しています。

松平氏が深溝城を手に入れた後、この城は吉良氏との戦いの重要な拠点となりました。この城の領主となった松平氏の一族は特に深溝松平家として知られ、代々城主たちは二代目の好景、三代目の伊忠、四代目の家忠、五代目の忠利と継承されました。忠利は慶長19年（1614年）に三河吉田藩の吉田城に移ることで、深溝城は松平氏の支配から外れました。その後、元和元年（1615年）には深溝城は廃城となり、以後陣屋と呼ばれるようになります。

明治維新の頃には、深溝城に関連する陣屋も廃止され、その後昭和時代に入ると、城跡は民間に売却され工場用地として使用されることになりました。現在、深溝城跡にはごくわずかの文明の痕跡が残されています。看板と記念碑が建てられているほか、石垣のようなものが目視されますが、かつての建物は全く残っておらず、城の構造に関する情報はほとんど失われています。

幸田町郷土資料館では、深溝城の模型が展示されており、陣屋の絵図の写しも所蔵されています。これにより、かつての城の姿や周辺の歴史を知ることができる貴重な資料となっています。深溝城の歴史は、地域の文化や歴史を理解する上で重要な要素の一つです。

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