大庭氏

大庭氏（おおばし）

大庭氏は、桓武平氏の流れを汲み、相模国の大庭御厨一帯を支配した武家氏族です。鎌倉氏の一族であり、梶原氏、俣野氏、懐島氏、豊田氏、桐原氏などの庶家を輩出しました。

歴史

大庭氏は、鎌倉権五郎景正の係累とされています。景正が大庭御厨を開発し、永久4年（1116年）に立荘したものを、その一族が下司職を継承し、大庭氏を称したと伝えられます。家系については、景正―景経―大庭景忠とする説（『尊卑分脈』など）と、景村（景正の叔父）―景明―大庭景宗とする説（『桓武平氏諸流系図』など）の二つがあります。

源頼義が平直方の娘婿となって鎌倉に移住したことがきっかけとなり、鎌倉景通、景正らは頼義、その息八幡太郎義家の郎等となりました。しかし、景正が開発の許可を得た永久5年（1117年）は、源義家に対する土地の寄進禁止令が発せられた頃であり、彼は伊勢神宮に寄進して大庭御厨としたと想像されています。

天養元年（1144年）頃、鎌倉に拠点を置いていた源義朝が周囲の在庁官人らと大庭御厨に侵入し、狼藉、略奪行為をはたらき、御厨廃止を宣言して蹂躙しました。この事件は二度にわたり、二度目のものは大規模で、義朝以下、名代・清原安行、三浦義継、三浦義明、中村宗平、和田助弘ら率いる千騎以上の軍勢が乱入しました。大庭氏側は景正の孫・景宗が下司としてこれにあたったとされます。

翌年の天養2年（1145年）、義朝の乱行の禁止および御厨に対する妨害行為停止の宣旨が出され、一応の終結を見ましたが、この事件をきっかけに大庭氏は義朝と従属関係を持つようになったと考えられています。保元の乱では大庭景義、大庭景親兄弟が義朝の郎党として活動しています。平治の乱では大庭氏は在京しておらず、不参加であったようです。

大庭景親は、源氏と袂を分かち、平氏政権下では駿河国府を事実上支配し、平氏の代官となりました。治承4年（1180年）に源頼朝が挙兵すると、景親は頼朝追討の任に当たります。それに対し景義は頼朝の下に参陣します。景親は後に頼朝に敗れ処刑されますが、景義の系統が御家人として生き残りました。

その後、和田合戦、宝治合戦などで勢力は衰退しました。北条氏政権下の一連の紛争により、関東からは大庭氏の勢力はほぼ一掃されたといってよいでしょう。大庭氏の子孫および一族の存続を示す具体的な記録の一つとして、相模国に残っていた大庭景連が中国地方、備後の新庄本郷に地頭として任命され、建保元年（1213年）、当地で築城した事例が見られます。

のち大場氏と称しました。城は相模と同じく大庭城と呼ばれましたが、ほかに大場山城、本郷城などの呼称があります。南北朝時代の騒乱時、石見国で起こった三隅入道の乱において、精鋭部隊の一翼として子孫の大庭孫三郎が活躍しました。諸説ありますが、のちに戦国時代に入り尼子氏配下の古志氏に城を奪われ、歴史の表舞台から姿を消します。

また、同族と見られる大庭景家、大庭矩景、大庭賢兼、大庭景忠が大内氏や毛利氏の家臣や奉行人として活動しています。子孫は大庭源大夫家として長州藩士として続きました。

鹿児島県の黒島には、「イバドンの墓」なる墓が伝わって観光施設となっており、そこに葬られているのは平家の追討のために来島した大庭三郎家政とされ、家政はこの地で平家の娘と恋に落ち、そのまま黒島に住み着いたと言われています。

略系図

『尊卑分脈』
出典：『尊卑分脈』、『姓氏家系大辞典』
「三浦系図」
出典：『姓氏家系大辞典』
「諸家系図纂」
出典：『姓氏家系大辞典』

庶家

梶原氏
懐島氏
豊田氏
俣野氏
桐原氏

脚注

出典

参考文献

太田亮 著「国立国会図書館デジタルコレクション 大庭　オホバ」、上田, 萬年、三上, 参次 監修 編『姓氏家系大辞典』 第一巻、姓氏家系大辞典刊行会、1934年4月1日、1275-1278頁。
『平安遺文』
『松永市本郷町誌』
『萩藩閥閲録』巻46「大庭源大夫」

外部リンク

『大庭氏』 - コトバンク

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