清水保雄

清水保雄（しみず やすお、1910年12月5日 - 1980年3月10日）は、昭和時代を代表する作曲家の一人です。69歳でその生涯を終えるまで、歌謡曲を中心に幅広いジャンルで活躍しました。

生涯と経歴

現在の東京都中央区にあたる東京市京橋区に生まれた清水は、明治大学で学びました。在学中はマンドリン部に所属し、音楽への造詣を深めます。学生時代に、後に歌謡界の巨匠となる作曲家・古賀政男に師事したことは、その後のキャリアに大きな影響を与えました。

大学卒業後の1940年、清水はビクターレコードの専属作曲家となり、プロフェッショナルとしての活動を開始します。この時期、彼は当時注目されていた南方メロディに触発された楽曲を発表しました。灰田勝彦が歌唱した「マニラの街角で」（佐伯孝夫作詞）や、同じく灰田勝彦による「バダビアの夜は更けて」（佐伯孝夫作詞）などがヒットし、作曲家としての地位を確立していきます。

彼の名を一層世に知らしめたのは、戦時中に発表された東宝映画の主題歌です。小畑実と藤原亮子が歌った映画「婦系図」の主題歌「婦系図の歌（湯島の白梅）」や、同じコンビによる映画「伊那の勘太郎」の主題歌「勘太郎月夜唄」は、戦時下の困難な状況にもかかわらず異例の大ヒットを記録しました。これらの成功により、清水は一躍人気作曲家となり、その後の歌謡曲界を牽引する存在となっていきます。

彼の作品の多くは、作詞家の佐伯孝夫との協業から生まれました。二人は長年にわたり名コンビとして数々のヒット曲を世に送り出しました。

主な作品

清水保雄は多作な作曲家であり、歌謡曲のほか、編曲、自治体歌、さらにはマンドリンオーケストラのための楽曲まで、多様なジャンルの作品を残しています。

彼の代表的な歌謡曲としては、前述の「マニラの街角で」「バダビアの夜は更けて」「婦系図の歌（湯島の白梅）」「勘太郎月夜唄」のほかにも、

「暁の連絡船」（歌：小畑実、藤原亮子）
「小太刀を使う女」（歌：小畑実、藤原亮子）
「誰か夢なき」（歌：竹山逸郎、藤原亮子）
「今日われ恋愛す」（歌：竹山逸郎）
「チューインガムは恋の味」（歌：暁テル子）
「東京バイヨン」（歌：生田恵子）
「雨のプラットホーム」（歌：淡谷のり子）
「十九の春」（歌：神楽坂浮子）
* 「女泣かせの銀座川」（歌：青江三奈）

などがあります。特に戦後も、竹山逸郎、暁テル子、生田恵子、淡谷のり子、青江三奈といった、時代を彩る多くの歌手に楽曲を提供し続けました。

また、青木はるみが歌った「野球けん」の編曲や、東京都江戸川区の自治体歌である「江戸川区歌」の作曲も手がけています。

学生時代に所属していたマンドリンへの愛着も深く、マンドリンオーケストラのための組曲「アイヌの印象」、組曲「東への道」、組曲「大和への道」、「沖縄の印象」といった作品も残しています。

1980年3月10日、69歳で死去。激動の昭和期に、歌謡曲を中心に多くの人々に親しまれるメロディを生み出し続けた作曲家として、その功績は今も記憶されています。

もう一度検索