清水卯一

清水卯一：京焼を極めた陶芸家

清水卯一（1926年-2004年）は、日本の陶芸史に名を刻む重要な陶芸家です。京都で京焼陶磁器卸問屋を営む家に生まれ、幼少期から陶芸に囲まれた環境で育ちました。11歳で父を亡くしたことがきっかけで、家業を継ぐために立命館商業学校に入学しますが、陶芸への情熱を抑えきれず、わずか2年で中退。14歳の若さで、巨匠・石黒宗麿に師事します。

しかし、第二次世界大戦下の厳しい状況下で師事期間は短く終わり、その後は自宅で自作を開始。国立京都陶磁試験場での研鑽を経て、京都市立工業研究所に勤務するも、終戦後に退職し、以後、自宅陶房を拠点に創作活動に専念しました。

戦後の日本において、清水卯一は前衛的な陶芸家集団「四耕会」の結成に参加するなど、積極的に現代陶芸の潮流を牽引しました。「緑陶会」「京都陶芸家クラブ」といった団体にも関わり、精力的な活動を展開。1957年には日本工芸会正会員となり、その地位を確固たるものとしました。

彼の才能は瞬く間に国内外で認められ、1958年のブリュッセル万国博覧会ではグランプリを受賞。国際的な舞台で高い評価を獲得し、日本の陶芸界の地位向上に大きく貢献しました。1985年には、師である石黒宗麿に続く「鉄釉陶器」の重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定され、その卓越した技と芸術性が広く世に知れ渡ることとなります。

1970年には滋賀県志賀町に転居し、登り窯「蓬莱窯」を築き、そこで数々の作品を生み出しました。蓬莱窯は、彼の創作活動の拠点であると同時に、晩年、後進の育成にも大きく貢献することになります。積極的に若手陶芸家の指導を行い、自身の技と経験を惜しみなく伝授することで、日本の陶芸界の発展に貢献しました。

数々の受賞歴も彼の偉業を物語っています。日展入選、朝日新聞社賞の4年連続受賞、最優秀作家賞、高松宮総裁賞など、輝かしい受賞歴は、彼の類まれな才能とたゆまぬ努力の証です。1999年には、1940年から1998年までの作品147点を滋賀県立近代美術館に寄贈し、日本の美術文化への貢献を示しました。

清水卯一の創作活動は、伝統的な技法を継承しながらも、常に革新と探求を続け、独自の芸術世界を築き上げました。彼の作品は、その力強い造形と奥深い釉薬の表現によって、見る者に深い感動を与え続けます。2004年、大腸がんのため77歳で永眠。彼の死は、日本の陶芸界に大きな損失をもたらしましたが、その功績は後世に長く語り継がれることでしょう。

なお、清水卯一には、大相撲の立行司（のち副立行司）を務めた13代木村玉之助という親戚がいたという興味深いエピソードも伝わっています。

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