清水義之 (実業家)

清水義之：十六銀行を率いた実業家の生涯

清水義之（しみず よしゆき、1932年7月21日 - 2014年5月4日）は、日本の実業家であり、株式会社十六銀行の代表取締役会長・顧問、岐阜商工会議所会頭、中部経済連合会副会長を歴任しました。

生い立ちと銀行入行

清水義之は、サラブレッドとして生まれました。父は後に大垣市長を務めた清水正之であり、前任頭取の高橋順吉は父の従兄弟にあたります。また、大垣共立銀行頭取となる外村次郎は旧制大垣中学校の先輩、岐阜銀行頭取となる花田実は名古屋大学経済学部の先輩という環境でした。

1955年に名古屋大学経済学部を卒業後、十六銀行に入行しました。彼は一貫して本部に在籍し、名古屋支店次長、審査部課長、人事部長を歴任。支店長経験を経ずに1979年に取締役に就任し、1984年には頭取に就任しました。これは当時、地銀業界では最年少の51歳という記録でした。

頭取としての経営手腕

清水は、父の従兄弟である高橋の下で帝王学を学び、早くから将来を嘱望されていました。頭取就任後は、預金獲得競争を推進し、預金量を大幅に増加させました。また、親密都銀を第一勧業銀行から三菱銀行に変更し、地銀として初めて上海に駐在員事務所を開設するなど、先見の明を持つ経営者でした。特に、人事畑での経験から、組織の簡素化と若手登用を積極的に進めました。

闘病生活と保守経営

しかし、頭取就任からわずか8ヶ月後、清水は脳梗塞で倒れ、健康を害します。入退院を繰り返す中で、側近たちの思惑もあり、内外公職は在任を続けました。1990年頃には健康を回復するものの、その後再び体調を崩し、公の場に姿を見せることが少なくなりました。

清水の闘病中、十六銀行は保守的な経営姿勢を貫きました。このことが、バブル崩壊後に多額の不良債権を抱えた他の銀行と比較して、結果として健全な財務力と独立経営を維持したという評価もあります。

ワンマン体制と側近政治

清水は、行内でワンマン体制を敷き、側近が権力を握っていたと指摘されています。特に、関連会社である十六ディーシーカード社長を中心とする側近政治は、頻繁な役員交代やカードの過度な営業活動を引き起こし、金融機関に対する苦情件数が最多となる事態を招きました。また、清水と親密な関係にある融資先が優遇されるなど、コーポレートガバナンス上の問題も指摘されました。

金融当局との軋轢と退任

1999年、日銀と大蔵省出身の専務が退任したことで、金融当局との関係が悪化しました。2000年には、金融監督庁（当時）の検査で経営トップからのヒアリングができなかったことが問題視され、清水は頭取を退任し、代表権のある会長に就任することになりました。しかし、実質的な権力は握り続けたため、院政との批判を受けました。

清水の後継者として指名された小島伸夫は、清水の院政下からの脱却を図り、経営改革に取り組みました。

初の赤字決算と退任

2002年、十六銀行はサブバンクであった大日本土木の経営破綻により、初の赤字決算を計上しました。これにより、行内での清水の求心力は急速に失われ、2005年には、代表取締役会長から役員でない顧問に退きました。彼の21年に及ぶ代表取締役在任は、ワンマン体制と側近政治によるものであり、晩年は病魔に苦しみ、意思疎通が困難であったと言われています。

死去とエピソード

2014年5月4日、清水義之は多臓器不全のため81歳で亡くなりました。

清水は、多くの役職を兼任していたため、”日本で一番所得が多い銀行頭取”と評されたこともあります。また、娘がフライデー誌にヌード写真を掲載された際には、同誌を買い占めたという逸話も残っています。行内の名古屋大学出身者の集まりは「名清会」と呼ばれ、清水を頂点とする名大閥の牙城として機能していました。

清水義之は、その経営手腕と独特な個性によって、十六銀行に大きな影響を与えた人物でした。彼の生涯は、地方銀行の経営における光と影を映し出す鏡として、今後も語り継がれることでしょう。

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