清涼文益

清涼文益（せいりょう もんえき、885年 - 958年）は、中国の唐末から五代十国時代にかけて活躍した禅僧であり、法眼宗の開祖として知られています。法眼文益（ほうげんもんえき）とも呼ばれます。

生涯

清涼文益は、光啓元年（885年）に杭州余杭県で生まれました。俗姓は魯氏です。大順2年（891年）に新定智通院で出家し、越州開元寺で具足戒を受けました。その後、各地を行脚して禅を学び、長慶慧稜に参禅しました。湖湘へ向かう途中、地蔵院で羅漢桂琛に師事し、その下で頓悟を開きました。この時の問答は「地蔵親切」として『従容録』第20則に収録されています。その後、撫州崇寿院、金陵法恩院を経て、清涼院に住し、浄慧禅師と尊称されるようになりました。

顕徳5年閏7月5日（958年8月22日）、沐浴後に坐脱しました。その塔は無相塔と呼ばれています。大法眼禅師の諡号が贈られ、後に大知蔵大導師の号も重ねて贈られました。法嗣には、天台徳韶、永明道潜、清涼泰欽など多くの弟子がいます。著作には『宗門十規論』があり、語録としては『法眼文益禅師語録』が残されています。

文益書字の逸話

『五灯会元』には、清涼文益の禅の境地を示す逸話が収録されています。ある僧が壁、窓、門に「心」の字を書いたところ、文益はそれぞれに「壁」「窓」「門」と書き、その境涯を示しました。この逸話は、禅の教えにおける「ありのまま」の重要性を表していると解釈されています。

清涼文益の禅

清涼文益の禅は、日常のあらゆる瞬間に真理が宿るという考え方を重視しました。彼の教えは、後の禅宗に大きな影響を与え、特に「法眼宗」の基礎となりました。法眼宗は、禅の五家の一つとして、その後の禅宗の発展に重要な役割を果たしました。

参考文献

土屋太祐『法眼　唐代禅宗の変容と終焉』「唐代の禅僧12」臨川書店、2024年
『新版 禅学大辞典』 禅学大辞典編纂所(駒沢大学)編、pp.1231-1232、大修館書店、1985年

清涼文益は、その生涯を通して、禅の教えを広め、多くの弟子を育成しました。彼の禅は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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