渋川敬直

渋川敬直の生涯と業績

渋川敬直（しぶかわ ひろなお）は、江戸時代後期に活躍した有名な暦学者であり、幕臣であった。彼は文化12年、1815年に生まれ、嘉永4年7月25日、1851年に37歳で亡くなった。通称として六蔵と呼ばれ、号は福堂であった。彼は天文方の渋川景佑の嫡男として江戸に生まれ、父の影響を受けながら天文学や暦学の道を歩んだ。彼の長兄は佑賢であり、子に敬典を持つ。

来歴

敬直は天保2年（1831年）6月、17歳のときに父のもとで天文方の見習いとしてのキャリアをスタートさせた。彼は天保13年（1842年）10月に、在職中に書物奉行を兼任することとなり、給与として200俵の切米を受け取ることになった。敬直は家業である天文学や暦学に加え、和漢洋の知識を身につけ、オランダ語の英文法に関する書籍を翻訳した『英文鑑』という著作を残している。また、父景佑が天保暦を改訂する際には、その補佐として重要な役割を果たした。

老中水野忠邦は敬直の優れた才能を高く評価し、彼は天保の改革の過程で国政に関する意見をしばしば求められ、上書を行った。敬直は鳥居耀蔵らと共に「水野の三羽烏」と呼ばれることがあり、この期間に彼は政治的な影響力を持っていたことが窺える。特に天保10年7月（1839年）には、忠邦に対してオランダ関連の情報を直接江戸に持ち込むことの禁止についての意見書を提出し、さらにはオランダ語書籍の検閲強化や洋学の独占を目的とした提案を行っていた。

これらの意見は直ちには受け入れられなかったものの、弘化2年（1845年）には、翻訳書の出版許可が町奉行から天文方に移されるなど、敬直の提案の一部が実現した。弘化元年には、オランダ国王ウィレム2世からの開国勧告に関する国書の翻訳も担当し、その役割は重要だった。

しかし、忠邦の失脚後、敬直は罪に問われてしまう。弘化2年10月3日（1845年11月2日）には、彼は豊後に配流され、臼杵藩主の稲葉観通に預けられることとなった。これに伴い、彼は廃嫡され、弟の佑賢が後を継ぐことになった。失意の中で敬直は6年後、1851年に病に倒れ、若くして命を落とすこととなる。

死後の評価

敬直の死後、彼の生前の意見書は『見果てぬ夢』としてまとめられ、彼の考えや業績が後世に伝わることになった。法号は霊照院月峰宗円居士と称されている。彼の墓所は大分県臼杵市の多福寺と東京都品川区の東海寺にある。

系譜

敬直の家系は、父親に渋川景佑、また母親や妻についての情報は不詳であるが、子供として渋川敬典が名を挙げられている。彼の業績や思想は、後の天文学や暦学においても影響を与え続けているといえる。彼が果たした役割と貢献は、江戸時代の学問の発展において重要なものであった。

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