渋沢栄一記念財団

公益財団法人渋沢栄一記念財団

公益財団法人渋沢栄一記念財団（しぶさわえいいちきねんざいだん）は、日本の近代経済社会の礎を築いた渋沢栄一の思想に基づき、「経済道義」の確立と高揚を目的とする非営利組織です。渋沢栄一に関する史料の保存・公開、研究支援、関連情報の提供などを通じて、その精神と業績を現代に伝えています。

沿革

当財団のルーツは、1886年（明治19年）に渋沢栄一の門下生らによって設立された学術・親睦団体「龍門社」にあります。龍門社は後に渋沢栄一の事績顕彰と研究の中核を担う組織へと発展しました。

大きな転換期を迎えたのは2003年（平成15年）11月です。龍門社を改組・名称変更する形で「財団法人渋沢栄一記念財団」が発足しました。この時、特に実業史研究における情報化の推進を目指す「実業史研究情報センター」が設置されました。初代理事長には、渋沢栄一の曾孫である渋沢雅英氏が就任しました。

その後、日本の公益法人制度改革に対応し、2010年（平成22年）9月には内閣総理大臣の認定を受けて「公益財団法人」へと移行しました。

組織体制においては、2015年（平成27年）4月に改編が行われ、実業史研究情報センターは「情報資源センター」に、調査研究部門は「研究センター」へと名称変更されました。

長年にわたり財団の運営を牽引してきた渋沢雅英理事長は、龍門社時代を含め通算23年の任期を終え、2020年（令和2年）に退任しました。後任として、樺山紘一氏が第二代目の理事長に就任し、現在に至ります。渋沢雅英氏は現在、非常勤の相談役として引き続き財団に協力しています。

歴代理事長

初代 渋沢雅英（しぶさわ まさひで）: 渋沢栄一の曾孫。龍門社時代を含む1997年から2020年まで理事長を務めました。現在は非常勤相談役。
二代 樺山紘一（かばやま こういち）: 2020年より現職。

主な事業内容

渋沢栄一記念財団は、多角的な事業を通じて渋沢栄一の精神と業績の普及・研究促進を図っています。

施設運営: 東京都北区の飛鳥山公園内にある渋沢史料館では、展示を通じて渋沢栄一の生涯と事業を紹介しています。また、史料の収集・保存・公開を担う情報資源センターと、研究活動を推進する研究センターを運営しています。
情報資源の提供: 渋沢栄一が関与した企業・団体の変遷を示す「渋沢栄一関連会社名・団体名変遷図」や、基幹資料である『渋沢栄一伝記資料』のデジタル版などを公開し、研究や学習のための情報基盤を提供しています。
渋沢社史データベース: 日本経済の発展に貢献した企業の歴史を記録した社史をデジタル化し、オンラインで検索・閲覧できるデータベースとして提供しています。
関連事業への協力: 埼玉県が主催する経営者顕彰「渋沢栄一賞」の共催や、県内中小企業向け「渋沢栄一ビジネス大賞」の後援を行っています。また、日仏間の優れた研究成果を顕彰する「渋沢・クローデル賞」（日仏会館・読売新聞社主催）に協賛しています。
機関誌発行: 渋沢栄一に関する最新の研究動向や財団の活動報告を掲載した機関誌『青淵（せいえん）』を発行しています。

主な出版物

財団が刊行した代表的な書籍には以下があります。

『渋沢栄一を知る事典』渋沢栄一記念財団編（東京堂出版、2012年）
『世界のビジネス・アーカイブズ : 企業価値の源泉』渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター編（日外アソシエーツ、2012年）
『Rediscovering Shibusawa Eiichi in the 21st century』 edited by Gil Latz（Shibusawa Eiichi Memorial Foundation、c2014年）
『渋沢栄一記念財団の挑戦』渋沢栄一記念財団編（不二出版、2015年）
シリーズ出版『渋沢栄一と「フィランソロピー」』（全8巻）（ミネルヴァ書房、2017年-）

顕彰歴

情報資源センター（旧実業史研究情報センター）は、その取り組みに対し以下の顕彰を受けています。

2009年: 2009年度グッドデザイン賞
2009年: Library of the year 2009 優秀賞（知的資源イニシアティヴ主催）
2017年: 第19回図書館サポートフォーラム賞
2019年: デジタルアーカイブ学会第1回学会賞（実践賞）

このように、公益財団法人渋沢栄一記念財団は、渋沢栄一の思想を基盤とした多角的な活動を展開し、その遺産を現代社会に活かすための重要な役割を担っています。

もう一度検索