社史

社史とは

社史とは、企業が自社の歴史を記録し、書籍や電子媒体として発行するものです。多くの場合、創業からの歴史や重要な出来事が詳細に記述されます。社史は単なる記録にとどまらず、企業のアイデンティティを形成し、社員の連帯感を醸成する役割も担っています。

社史の概要

社史は、企業の過去、現在、未来を繋ぐ重要な資料です。企業が自らの歴史を振り返り、その歩みを記録することで、企業の価値を再認識し、未来への教訓とすることができます。社史は、企業の公式見解として編纂されるため、その内容は企業の主観に偏る場合があります。そのため、経営史の研究者からは、社史が企業の宣伝文書として都合の良いことしか書かれていないという批判的な意見もあります。

しかし、一方で、公共図書館に納められた社史は多くの人々に読まれており、企業の顔としての役割を果たすため、記述の信頼性が高いという見方もあります。社史は、企業内部の関係者だけでなく、広く社会に向けて自社の歴史を伝えるための重要な手段となっています。

社史の種類

社史は、その内容や目的に応じていくつかの種類に分類されます。

正史: 企業が公式に認めた社史であり、通常は創業からの歴史が網羅的に記述されます。
通史: 企業の歴史全体を時系列に沿って記述したもので、社史の中心となるものです。
テーマ史: 特定のテーマに焦点を当てて記述された社史で、製品史、事業所史などがあります。
周年誌: 企業の創立周年を記念して発行されるもので、社史の形を取ることもあります。
略史/小史: 簡潔に企業の歴史をまとめたもので、社史の一部として収録されることもあります。
記念誌: 周年記念などのイベントに合わせて発行されるもので、社史としての側面を持つものもあります。

これらの分類の他に、労働組合が発行する『組合史』や、業界団体が発行する『業界団体史』、特定のプロジェクトに関する『工事誌』や『建設史』などもあります。

社史の発行状況

日本では年間約200点の社史が発行されており、企業規模に関わらず、多くの企業が自社の歴史を記録しています。特に、企業の創業周年などの節目には、社史の発行が増える傾向があります。社史は、社員向けに発行されることが多いですが、近年ではインターネットで公開したり、一般販売されるケースも増えています。

社史は通常、非売品扱いされることが多いですが、近年では制作費を回収するために販売されるものも出てきています。最初に一般書店で販売された社史は1991年4月に発売された『セゾンの歴史』です。

社史の表彰と啓蒙活動

社史の水準向上を目指し、日本経営史研究所が「優秀会社史賞」を隔年で選考しています。選考基準は、社内外資料の発掘・収集努力、記述内容、情報公開、企業史の流れが理解できるか、読者を惹きつける魅力、刊行目的の実現度などです。

経団連は社史の重要性を啓蒙するため、図書館活動や社史フォーラムを開催しています。これらの活動を通じて、社史の作成に関わる人々の知識向上や交流を図っています。

社史の書き手

社史の執筆者は、経営者自身、社内の歴史研究に詳しい人材、大学教授など様々です。外部の研究者に依頼するケースもありますが、その企業の競争力の源泉など、本当に書きたいことが書けない場合や、公正さの維持が課題となる場合もあります。

また、専門のライター（「社史ライター」「年史ライター」）も存在し、社史製作に必要な知識の拡散も図られています。

社史の製作条件

社史の製作には、予算の裏付けと発行する意思が必要です。予算不足だけでなく、過去の不祥事などの存在が発行を躊躇させる要因となることもあります。しかし、過去の不祥事を隠蔽するのではなく、積極的に記述することで企業の透明性を高めようとする動きもあります。

社史の媒体は、紙媒体だけでなく、CD-ROMやウェブサイトなど多岐にわたります。近年では、電子媒体の活用も進んでいます。

社史関連ウェブサイト

社史に関する情報を提供するウェブサイトも多数存在します。国立国会図書館や各大学図書館、研究団体などが社史を収集・公開しています。これらのサイトを通じて、社史に関する情報を効率的に入手できます。

日本経営史研究所
国立国会図書館リサーチナビ
渋沢社史データベース
流通産業ライブラリー
神奈川県立川崎図書館
長尾文庫（龍谷大学図書館）
神戸大学経済経営研究所附属企業資料総合センター
社史Main Page (Shasi Wiki)
北米社史研究会 Google Discussion Group
労働図書館
横浜商科大学図書館 松本記念文庫
酪農乳業史デジタルアーカイブ
外国企業の社史 (NDLリサーチナビ)
Company Histories
アジ研図書館の蔵書を検索
名古屋学院大学学術情報センター
立命館大学図書館蔵書検索

社史出版業者

社史の出版を専門とする業者も多く存在します。これらの業者は、社史の編纂からデザイン、印刷までをトータルでサポートします。

ねんりん (大日[[本印刷]])
トッパン年史センター
社史 (日本経済新聞出版)
社史・団体史 (東洋経済リサーチセンター)
年史・記録誌 (交通新聞社)
社史制作・記念誌制作 (産業能率大学出版部)
社史製作ノウハウ集 (出版文化社)
企業を活性化できる 社史の作り方（英語版、中文版）
Web DNA Library (PHPパブリッシング)
リンクウィキ （CMSで編纂した社史）

まとめ

社史は、企業の歴史を記録し、未来へと繋ぐ重要な資料です。社史は、企業のアイデンティティを形成し、社員の連帯感を醸成するだけでなく、社会に向けて企業の活動を伝えるための重要な手段です。社史を作成する際は、予算、目的、読者層などを考慮し、企業の歴史を適切に伝えることが重要です。

参考文献

日本経営史研究所『会社史総合目録 : 専門図書館協議会設立30周年記念』日本経営史研究所, 丸善 (発売)、1986年。
矢倉伸太郎「<書評> 日本経営史研究所編刊『会社史総合目録』」『経済資料研究』第20巻、経済資料協議会、1988年、51-56頁。
橘川武郎「社史の戦略的活用法」（企業アーカイブへの提言内）DNP年史センター、『大日[[本印刷]]』
* 由井常彦「社史には何が書かれるべきか」専門図書館 71号 1978.1, pp30-32

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