渋沢芳昭

渋沢 芳昭（しぶさわ よしあき）

渋沢芳昭氏は、1929年（昭和4年）9月12日に日本の実業家、著述家として生まれ、特にアメリカ合衆国での長い滞在を通じて、セントルイス日本会会長を複数期にわたり務めるなど、日米間の交流促進に尽力しました。

曾祖父は日本資本主義の父として知られる渋沢栄一、祖父は篤二、父は実業家の智雄という、著名な家系に連なります。父・智雄は、芳昭氏が生まれる前年に渋沢家から分家しており、芳昭氏は幼少期を分家の跡取りとして過ごしました。

しかし、戦後間もない1947年4月、芳昭氏がまだ17歳の時に父・智雄が急逝するという予期せぬ出来事に見舞われます。この出来事は、まだ若かった芳昭氏に大きな責任を負わせることとなり、以降、彼は一家の大黒柱として、残された家族を支えるために懸命に働きました。困難な状況下でも学業を続け、1956年には東京外国語大学を卒業しています。

大学卒業後、実業家としての道を歩み始め、仕事の都合により、芳昭氏は一家でアメリカへ転居することとなります。この海外での生活は長期にわたり、後に実業家となる長男の渋澤健氏も日本の大学ではなく、アメリカの教育機関で学ぶことになります。

実業界でのキャリアを積む傍ら、芳昭氏は地域社会、特に在米日本人社会への貢献にも情熱を注ぎました。1998年から2018年までの20年間、セントルイス日本会の会長を、第7代から第10代まで連続して務め上げました。この長期にわたる在任期間中、彼はセントルイス地域における日本文化の紹介や、日本人コミュニティの支援、そして地元アメリカ社会との友好関係構築に貢献しました。これらの功績が認められ、2008年には旭日双光章を受章しています。

著述活動としては、1964年に「銀行員の英会話」を執筆しており、これは当時の実務家向け英語学習の一助となったと考えられます。

家族構成を見ると、父は渋沢智雄、母は中村勇三郎の姉にあたる節子です。兄弟姉妹には弟の芳則氏、芳純氏、妹の百合子氏、加代子氏がいます。長男は実業家として知られる渋澤健氏です。また、曽祖父・栄一からの広範な親族関係には、伯父にあたる子爵で実業家の渋沢敬三氏や渋沢信雄氏、従兄弟には渋沢雅英氏、実業家の渋沢裕氏、生物学者の服部黎子氏などがいます。

渋沢芳昭氏は、日本の近代化に大きな足跡を残した渋沢栄一の血を受け継ぎながらも、若くして一家を支えるという逆境を乗り越え、自らの実業界でのキャリアを築き上げました。さらに、アメリカでの生活を通じて、単なるビジネスパーソンとしてだけでなく、セントルイス日本会会長として地域社会に深く関わり、日米間の文化交流や友好関係の発展に長年貢献しました。その生涯は、困難に立ち向かい、異国の地で日本人のプレゼンスを高めることに尽くした人物の歩みとして記憶されるでしょう。

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