渡会春彦

渡会 春彦（わたらい の はるひこ）

概要

渡会春彦は、平安時代中期における重要な祀官で、その姓は渡会神主である。官位としては外従五位下を持ち、伊勢豊受大神宮の禰宜を務めた。彼の子孫は「松木春彦」とも名乗り、俗称として「白太夫」と呼ばれた。

生い立ちと家系

春彦は、伊勢の豊受大神宮で大内人を務めていた渡会高主の末っ子として誕生した。高主は最初は子宝に恵まれず、祈願の結果、翌年には双子を授かり、さらにその次の年にも双子が生まれるという、特異な巡り合わせを持つ家族の一員であった。春彦は最後の双子であり、彼には兄として秋並がいた。誕生日は11月18日である。

春彦は成長すると、豊受大神宮の権禰宜として長きにわたって神事に従事した。彼の白髪は若い頃から目立っていたため、仲間から「白太夫」という愛称で親しまれることとなった。

官職と神事

897年、春彦は菅原道真の提案を受けて検非違使に任命された。この検非違使は、伊勢神宮における儀式や神事において重要な役割を果たすもので、春彦の職務内容は今後の神事作法に大きな影響を与えた。918年には、彼は兄の養子となり、禰宜の地位を引き継いだ。彼は約15年間この職を続け、その間に現在の豊受大神宮の神事作法の基盤を築いたとされる。

934年には、禰宜職を自身の長男に引き渡し、946年に死亡したと伝えられている。

菅原道真との関係

春彦は、菅原道真とも深い関係を持ち、道真が伊勢豊受大神宮に安産祈願を行うために向かう際、白太夫に祈願を依頼した結果、道真は子を持つことができた。この縁から、春彦は道真の傅役として招かれ、彼が大きな影響を受けることとなった。道真の左遷時には、誰も同行しない中で春彦が老齢にもかかわらず道真に寄り添い続け、その忠誠心が後世に語り継がれた。

道真の死後、春彦は道真の遺物を道真の息子に届けるために旅をし、その途中で亡くなる運命を辿った。彼の死は905年のことで、79歳であった。

伝承と文化的影響

渡会春彦の物語は、各地の伝承や神社に今も息づいている。彼を祀る神社が全国各地に存在し、その中には世木神社や白太夫社などがある。特に京都市や大阪府には春彦を祀る社が多く、その信仰は広がりを見せている。

墓所と遺跡

春彦の墓は、三重県伊勢市の金剛寺に存在したとされており、彼の供養と信仰は時代を超えて受け継がれている。金剛寺は弘法大師によって開かれた寺で、春彦の墓地はその歴史の重要な部分を形成する。

彼の伝承は、道真の神格化とともに、地方の神社で今も生き続けている。渡会春彦の名は、ただの歴史上の人物ではなく、日本の文化や信仰の中で生き続けているのである。

もう一度検索