渡党

渡党（わたりとう）について

渡党は、14世紀初頭に存在した蝦夷島の集団のひとつであり、その詳細は『諏訪大明神絵詞』によって知られています。この文献は1356年に成立し、当時の渡党の特徴やその立ち位置を明らかにしています。渡党は主に道南（現在の北海道渡島半島）に住んでおり、他の2つの集団である日ノモトや唐子と比較すると、「和国の人」とのコミュニケーションが可能であった点が特徴的でした。彼らは津軽海峡を越えて交易を行い、境界的な役割を果たしていた可能性があります。渡党には、和人系アイヌやアイヌ系和人が混在し、さらには本州から流刑や逃亡によって北海道に渡った人々の子孫も含まれているとされています。

渡党の特徴

渡党の特徴として、彼らは多毛であり、髭が濃い一方で、和人に似た容姿を持っていたとされています。また、彼らは言語的にも和人と通じ合うことができ、本州の津軽や浜辺との交流が存在していました。『諏訪大明神絵詞』の中では、渡党が日ノモトや唐子と同様に「蝦夷」と呼ばれる存在だったことが示されていますが、彼らの文化はアイヌ文化をルーツにしつつも、和人文化と融合していったと考えられています。アイヌ文化の成立時期は13世紀頃であり、擦文文化の要素を持ちながらも、和人からの交易品の増加がアイヌ文化の発展に寄与したと言われています。特に、鉄製品の流入は生活様式に大きな影響を及ぼしました。

交易の役割

過去の調査によれば、渡党はアイヌと和人の間の交易に重要な役割を果たしていたとされています。彼らは主に北方地域からの交易に従事し、生活必需品の確保を行っていました。特に鉄製品や漆器、絹織物はアイヌの生活にとって欠かせないものでありました。豊富な物資を鋭意集める中で、渡党は交易の仲介役としての地位を確立しました。驚くべきことに、志苔館跡からは、15世紀前半に埋蔵されたと推定される約40万枚の中国の古銭が発見されています。これは日本国内での発掘では最大級の量であり、その重要性を示すものとなっています。

渡党の来歴

渡党の起源については様々な説が存在します。元北海道開拓記念館の海保嶺夫は、渡党は「本州から渡ってきた党類」を指し、悪党的性格を持つ人々が蝦夷化したものと解釈しています。
一方、考古学者の瀬川拓郎は、渡党を道南日本海側の古代青苗文化に由来するとし、元々アイヌに帰属意識を持つ集団であったが、和人との接触によって影響を受けて次第に和人化したと考察しています。また、15世紀のコシャマインの戦いがアイヌと和人の対立を鮮明にする中で、渡党もその影響を受けていったという見解もあります。

まとめ

渡党はアイヌ文化と和人文化の交差点にいた存在であり、その交易活動を通じて両者が交流していました。彼らの存在は、北海道と本州の関わりを示す重要な一端であり、その歴史的背景は今もなお研究が続けられています。アイヌと和人が平和に共存していた時代もあったことや、交易がその基盤にあったことなど、渡党の歴史は今後も多くの人々にとって興味深いテーマとなるでしょう。

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