青苗文化

青苗文化について

青苗文化（あおなえぶんか）は、瀬川拓郎をはじめとする研究者により提唱された文化概念であり、主に10世紀中葉から11世紀末にかけて北海道・渡島半島の日本海側で見られました。この文化は、擦文文化と本州東北地方の文化が交錯し、独特の様相を呈しています。

特徴

青苗文化の名称は、奥尻島南端に位置する青苗遺跡で出土した土器に由来しています。ここで発見された青苗土器は、その製法が特徴的です。擦文時代の土器は表面が丁寧に仕上げられ、模様が施されていますが、青苗土器は土師器に類似し、表面を削って厚みを調整し、装飾が施されない点が注目されます。また、焼成方法が擦文土器とは異なり、草焼き技術が使用されている可能性がありますが、木製の窯で焼成が行われた可能性も示唆されています。

住居に関しても、青苗文化は両者からの影響を受けており、擦文文化の特徴として、深さ1メートルほどの竪穴建物が挙げられます。これに対し、10世紀の東北地方では浅い竪穴や平地に建てられた住居が一般的であり、その中間的な構造として、青苗文化の住居は東北地方のスタイルを踏襲しつつ中央に炉を設置しているのが特徴です。このことは、アイヌ民族の火の神に対する宗教的信念が影響していると考えられています。

青苗文化では小規模な鉄器生産が見つかっており、また環濠集落や木枠井戸などは東北地方との共通点があります。一方で、狩猟用の骨角器やアシカ、アワビの集中的な貝塚は、擦文文化との関連性を示しています。青苗文化の独自性については、瀬川のほかにも八木光則や小野裕子が研究を行っています。

背景

青苗文化が形成される背景には、9世紀後半の交易活動の活発化が挙げられます。この時期に擦文人と和人との交流が盛んになり、河口部には交易品が集積される集落が形成されました。一方、東北地方では人口変動があり、9世紀後半から10世紀初頭にかけて北部での人口激増に対し、南部では人口の急減が見られます。特に10世紀中葉には人口が半減する事態に直面し、これには938年から939年にかけての白頭山の噴火による気候の変動や、大規模な北海道への移住が関連しているとされています。瀬川は、東北地方から移住し、和人とアイヌとの交易を支えた人々が青苗文化を形成したと考えています。

また、1356年に成立した『諏訪大明神絵詞』によれば、北海道の蝦夷には日ノ本、唐子、渡党の三つのグループが存在し、これをもとに瀬川は青苗文化の後裔として「渡党」の存在を指摘しています。彼らは和人と似通った外見を持ち、髪が多く、骨角製の毒矢を使う民族であったと記録されています。

結論

青苗文化は特徴的な土器や住居の構造、小規模な製鉄の活動が認められるなど、日本の歴史において重要な役割を果たした独自の文化であると言えます。その成立背景と、擦文文化及び東北地方文化との相互作用は、今後の研究課題となります。

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