渡利璃穏

渡利璃穏（わたり りお）は、1991年9月19日生まれ、島根県松江市出身の元女子レスリング選手です。163cmの身長で、主に63kg級で活躍しました。

松江市立第一中学校時代からレスリングを始め、強豪校として知られる至学館高等学校、至学館大学へと進学。大学卒業後はアイシンAWに所属しました。中学校時代からその才能を発揮し、2008年には全日本ジュニアレスリング選手権大会（カデットの部）で優勝。これは、当時全国中学生選手権で3連覇を達成していた佐藤文香選手を破っての勝利であり、その実力が早くから注目されていました。その後も、2010年には全日本ジュニアレスリング選手権大会とジュニアクイーンズカップで優勝するなど、着実に力をつけていきました。

2013年には、全日本レスリング選手権大会で悲願の初優勝を果たします。翌2014年には、全日本選抜選手権でも優勝。特に決勝戦では、残り10秒からの逆転勝利という劇的な展開で、観客を大いに沸かせました。この勝利により、世界選手権とアジア大会への初出場を果たし、アジア大会では見事優勝を飾るなど、国際舞台でもその実力を証明しました。

2015年には、全日本選抜選手権で大学の後輩である川井梨紗子選手に敗れて世界選手権への出場を逃しますが、リオデジャネイロオリンピック出場を目指し、自身の階級である63kg級から75kg級への大幅な階級アップを決意します。1日5食以上を摂り、プロテインも摂取する過酷な増量に取り組みました。その結果、12月の全日本選手権では69.3キロで辛うじて計量をパスし、決勝では終了直前に逆転勝ちを収め、75kg級での優勝を果たしました。

2016年3月には、リオデジャネイロオリンピックのアジア予選で優勝し、75kg級でのオリンピック出場権を獲得しました。全日本チャンピオンの鈴木博恵選手との実戦形式の練習を経て、オリンピック代表に選出されましたが、本番では初戦でブラジルのアリーネ・ダシルバフェレイラ選手に惜しくも敗れ、敗者復活戦にも進むことができませんでした。

しかし、リオデジャネイロオリンピック後の2016年11月、渡利選手が悪性リンパ腫の一種であるホジキンリンパ腫と診断され、闘病生活を送っていることが明らかになりました。オリンピック前の検査で異常が見つかり、五輪後に病名が判明したとのことです。

病からの復帰を目指し、2018年6月には全日本選抜選手権の68kg級で優勝。全日本選手権を制している土性沙羅選手が故障で欠場したこともあり、同年10月に開催された世界選手権の代表に選ばれました。しかし、初戦で敗退という結果に終わります。

2019年11月時点で女子68kg級の東京オリンピック代表は未定であり、翌月の全日本選手権の結果次第で出場の可能性が残されていましたが、渡利選手は調整がうまくいかないことなどからこの全日本選手権には出場せず、現役引退を発表しました。

主な戦績としては、2006年全国中学生レスリング選手権大会優勝、2008年と2010年の全日本ジュニアレスリング選手権大会優勝、2011年FILAゴールデングランプリ決勝大会優勝などがあります。また、2013年の全日本レスリング選手権大会優勝、2014年の全日本選抜レスリング選手権大会優勝、同年のアジア大会優勝といった輝かしい実績を残しました。2016年にはリオデジャネイロオリンピックのアジア予選で優勝しましたが、本番では初戦敗退に終わりました。2018年には世界選手権に出場するも、初戦で敗退しています。

渡利璃穏選手は、その卓越したレスリングの才能と、病を乗り越えて競技に復帰する不屈の精神で多くの人々に感動を与えました。

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