渡名喜守定

渡名喜守定は、1902年（明治35年）2月5日に生まれ、1993年（平成5年）2月1日にその生涯を終えた日本の海軍軍人であり、戦後は故郷沖縄の復興と発展に尽力した人物です。

海軍を志し、海軍兵学校の第50期生として学びました。太平洋戦争中は、海軍の中枢である軍令部や南西方面艦隊で参謀の職務にあたり、また大本営参謀と海軍大学校教官を兼務するなど、要職を歴任しました。終戦時は福山海軍航空隊司令を務め、階級は大佐でした。

彼のキャリアにおいて特筆すべきは、第二次世界大戦勃発前のオランダ駐在武官としての活動です。この時期、ナチス・ドイツによるオランダ侵攻計画の情報をいち早く察知し、その危険性をオランダ当局に警告しました。この情報を受けたオランダ当局は適切な対応策を講じることができ、結果として侵攻による被害の軽減につながったとされています。この功績に対し、オランダ政府は彼にオレンジナッソウ勲三等を授与しました。当時、オランダの現役の中将や大将でさえ勲四等が一般的であった中、わずか38歳の一中佐であった渡名喜守定への勲三等の授与は極めて異例であり、その功績の大きさと国際的な信頼の厚さを示す出来事でした。

終戦後、渡名喜守定は沖縄に帰郷します。軍人の道を離れた後も、その卓越した識見と行動力をもって、戦後沖縄の復興と経済・社会の発展に大きく貢献しました。沖縄銀行の役員を務めたほか、琉球捕鯨協会の会長、琉球漁業の社長として水産業の振興に尽力。また、琉球水難救済会の会長として人命救助活動にも関わりました。さらに、琉球海外移住公社の理事長として、戦後の厳しい状況下にあった人々の新たな活路を開くための事業を推進しました。

特に、沖縄観光開発事業団の理事長として、歴史的な遺構である旧海軍司令部壕の修復に尽力したことは、その後の沖縄の平和学習や観光の発展にとって重要な礎となりました。軍人としてキャリアを積んだ人物が、戦後は平和の象徴ともなりうる遺構の保存・公開に力を尽くしたことは、彼の多面的な人となりを示すエピソードと言えるでしょう。

渡名喜守定の生涯は、激動の昭和という時代において、軍人として国に仕え、国際社会に貢献し、そして戦後は故郷沖縄の復興と将来のために尽力した、まさに波乱万丈なものでした。彼の功績は多岐にわたり、沖縄の経済、社会、そして歴史の記憶に深く刻まれています。

関連人物としては、同じ沖縄県出身の海軍提督である漢那憲和や、当山全信などが挙げられます。また、彼の生涯や業績に関心を持つ向きには、恵隆之介氏による著書『天皇の艦長 沖縄出身提督漢那憲和の生涯』（光文堂、1985年）なども参考になるでしょう。

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