渡辺勉 (写真評論家)

渡辺勉：日本の写真界を支えた評論家・写真家

渡辺勉（1908年5月9日 - 1978年1月17日）は、日本の写真評論家、そして写真家として、戦前から戦後にかけて多岐にわたる活動を展開しました。彼の業績は、写真評論にとどまらず、アマチュア写真家の育成、雑誌編集など、日本の写真文化の発展に大きく貢献したことで知られています。

生涯と足跡

岐阜県に生まれた渡辺は、中津商業を卒業後、写真の世界へと足を踏み入れました。戦前は報道写真家として作品を発表し、東方社にも参加。社会の動きを写真を通して伝えました。戦後には、「世界画報」の編集長として、写真雑誌の新たな方向性を示唆。また、木村伊兵衛賞の初期選考委員を務め、写真界の新たな才能の発掘・育成にも尽力しました。

晩年は、写真誌『アサヒカメラ』で写真批評を展開し、社団法人日本写真協会の理事も務めるなど、写真界の重鎮として活躍しました。1978年1月17日、胃がんのため東京都新宿区の東京厚生年金病院で逝去。69歳でした。

写真評論家・啓蒙家としての活動

渡辺の活動の中心は、写真評論とアマチュア写真家の啓蒙でした。多数の著書を通じて、写真の技術や表現方法を解説し、多くの写真愛好家たちに影響を与えました。彼の著書は、単なる技術書にとどまらず、写真の見方や選び方、写真を通した自己表現の方法など、より深い写真の魅力を伝えるものでした。

主要な著書

『組み写真の写し方纒め方』（アルス、1941年）
『女の写し方』（アルス写真講座・第5巻、アルス、1954年）
『写真の見方・選び方』（近代写真社、1954年）
『写真の名作鑑賞』（日本カメラ社、1956年）
『今日の写真明日の写真』（東京中日新聞出版局、1964年）
『写真・表現と技法』（ダヴィッド社、1966年）
『写真とは何か』（朝日ソノラマ、1975年）
『現代の写真と写真家　インタビュー評論35人』（朝日ソノラマ、1975年）
『新しい写真の考え方』（滝口修造、金丸重嶺と共著、毎日新聞社、1957年）
『朱欒: 平松太郎作品集』監修、1966年、P.I.A.

これらの著書は、写真の技術論から、写真を通した自己表現、写真作品の鑑賞まで、幅広いテーマを扱っており、写真愛好家にとって貴重な情報源となりました。

写真家としての側面

渡辺勉は、写真評論家として知られる一方で、写真家としても活動していました。戦前には報道写真家として作品を発表し、社会の出来事を記録しました。しかし、写真家としての渡辺勉を正面から取り上げた展覧会は、現在までに開催されていません。今後の研究によって、彼の写真家としての側面がより深く理解されることが期待されます。

まとめ

渡辺勉は、写真評論家、写真家、そして教育者として、日本の写真文化の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、著書や雑誌編集、写真賞の選考委員としての活動を通して、多くの写真愛好家や写真家に影響を与え続けています。彼の名前は、日本の写真史に深く刻まれています。

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