渡辺政人

渡辺政人：故郷を愛し、社会に貢献した実業家

渡辺政人（1892年 - 1975年）は、宮城県登米市出身の実業家・慈善家です。彼は、実業界での成功を収める一方で、故郷である登米の地域へ多大な貢献をしました。

生い立ちとキャリア

渡辺政人は、1892年に宮城県登米郡登米町（現在の登米市）で農家の次男として生まれました。工手学校（現・工学院大学）で建築を学んだ後、明治大学商科を卒業。台湾銀行東京支店での勤務を経て、日本鋼管（現JFEスチール、JFEエンジニアリング）に入社しました。

日本鋼管では、その手腕を発揮し、大正末期から昭和初期の不況下において鉄鋼会社間の協定成立に尽力。1940年には取締役に、1942年には常務取締役に就任しました。太平洋戦争中には、鉄鋼販売統制株式会社の社長も務め、日本の鉄鋼業界を牽引しました。

戦後、日本鋼管の副社長、社長を歴任しますが、公職追放により退社。その後、東京窯業社長などを経て、国策会社である東北開発（現三菱マテリアル）の初代総裁に就任しました。晩年には、学校法人明治大学の理事長も務め、教育分野にも貢献しました。

故郷への貢献

渡辺政人の特筆すべき点は、故郷である登米への深い愛着と、その地域への継続的な貢献です。社会人となった26歳から亡くなるまで、様々な形で登米地域への寄付や支援を続けました。

太平洋戦争末期には、政府から便宜を引き出し、鉄筋コンクリート製の登米大橋の完成に尽力。1961年には、伊達家関連の文化財を収蔵・展示する施設として登米懐古館を建設・寄贈しました。この懐古館には、横山大観や池大雅などの作品を含む貴重な文化財が数多く収蔵されており、そのうち約200点が渡辺からの寄贈によるものです。

1964年には、地域の子弟育成を目的とした登米渡辺奨学会を設立し、奨学金制度を通じて多くの若者の学びを支援しました。

人となりと遺訓

渡辺政人は、その誠実な人柄と、故郷を思う心で多くの人々に慕われました。彼の遺訓として残された3か条は、彼の人生哲学を端的に表しています。

1. 人生で一番大切なことは、誠実である。
2. 登米は、私達の「家」である。
3. 人間は、いつまでも「初心」を忘れてはならない。

栄典

渡辺政人の功績は、社会からも高く評価され、以下の栄典が授与されています。

1957年 - 登米町名誉町民
1962年 - 紺綬褒章
* 1964年 - 紺綬褒章飾版・木杯

渡辺政人は、実業家としての成功に加え、故郷への深い愛情と社会貢献を通じて、多くの人々に感銘を与えました。彼の精神は、今もなお登米の地に息づいています。

もう一度検索