渡辺輝一

渡辺輝一（わたなべきいち、1900年 - 1988年）は、日本の経済学者であり、特に経済政策を専門としていました。愛媛県出身で、1923年に東京商科大学（現在の一橋大学）を卒業。大学時代には、後に法制史学者となる町田實秀と三浦新七ゼミで同期でした。

1924年、横浜高等商業学校が開校すると、渡辺は同校の教授として着任し、商業政策、交通論、商業英語を担当しました。また、同校と横浜市立横浜商業専門学校の教授の懇談会を「イスペ会」と命名するなど、教育者としてだけでなく、交流の場を設けることにも尽力しました。ゼミの指導学生には、後に横浜商工会議所会頭などを務めた上野豊がいました。

太平洋戦争が始まると、渡辺は横浜高等商業学校内に設立された太平洋貿易研究所において、各務財団からの助成を受けて調査研究に従事しました。さらに、仏印進駐後には、1942年に新設された南洋学院の教授に就任し、フランス領インドシナでの現地調査も行いました。この時期には、日本が東南アジアに進出する中での経済的な側面を研究していたことが伺えます。

戦後の学制改革により、1949年に横浜国立大学教授兼横浜経済専門学校教授となりました。その後、1950年には横浜国立大学附属図書館長、1953年と1959年には横浜国立大学経済学部長兼評議員を務めるなど、大学運営にも深く関わりました。1965年に定年退官した後、横浜国立大学から名誉教授の称号を授与され、関東学院大学教授に就任しました。

渡辺は、その功績が認められ、1971年に勲二等瑞宝章を受章し、1988年には叙従三位となりました。彼の学問に対する情熱と、教育者としての貢献は、多くの人々に影響を与えました。

著書

『近世日本商業史』（帝國書院、1934年）
『交通學の學問的性格』（1938年）
『日本經濟文化史』（構造社、1946年）

これらの著書からも、渡辺が商業史、交通論、そして日本経済史といった幅広い分野で研究を行っていたことがわかります。彼の研究は、日本の経済学の発展に大きく貢献しました。

参考文献

『認識のうた－渡邊輝一先生の人と学問』（渡辺輝一先生追悼文集刊行委員会、1989年）

この追悼文集には、渡辺の人物像や学問に対する姿勢が詳細に記されており、彼の研究や教育への情熱を知る上で重要な資料となっています。

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