渡辺静 (野球)

渡辺静：白球を追った特攻兵士

渡辺静（わたなべ しずか、1923年4月15日 - 1945年6月6日）は、プロ野球選手（投手）であり、大日本帝国陸軍の軍人でした。石丸進一と共に、特攻隊員として戦死した2人のプロ野球選手として知られています。

生涯

プロ入り前

1923年4月15日、長野県北佐久郡協和村土林（現在の佐久市望月地区）で、地元の名士である父・渡辺鹿之助と母・ちやうの四男として生まれました。五男五女の9番目という大家族の中で育ち、幼い頃から体格に恵まれ、運動神経も抜群だったと言われています。

小学校の恩師の勧めで野球を始め、1938年に小諸商業学校に入学。2年生からレギュラーとして活躍しました。投手を中心に、捕手、内野手、外野手もこなすユーティリティプレイヤーでした。1941年、4年生の時には、全国屈指の強豪であった東邦商業学校との練習試合で延長12回3-3の引き分けという大健闘を見せ、小諸商の名を全国に広めました。この活躍がきっかけとなり、朝日軍（後の松竹ロビンス）の監督、竹内愛一から熱心な勧誘を受けるようになります。当初、プロ入りには消極的だった渡辺でしたが、竹内の熱意に心を動かされ、1943年1月に朝日軍に入団することを決意しました。

プロ入り後

1943年1月30日、朝日軍に入団。背番号は20。投手として登録されました。しかし、19歳という若さでプロの壁は厚く、公式戦での出場は僅か2試合に終わりました。5月23日の対大和戦（甲子園球場）で9回に代打として出場し三振、7月6日の対南海戦（後楽園球場）では代打として出場し、6-4-3の併殺打に倒れました。公式戦での出場機会は少なかったものの、慰問野球には積極的に参加していました。チームメイトだった坪内道則は、渡辺を「まじめでおとなしく、練習熱心だった」と評しています。

出征、そして戦死

1943年9月22日、政府による学徒出陣が決定。直後に渡辺も応召され、10月には徴兵検査で甲種合格を果たします。そして、11月19日、僅か1年の現役生活に別れを告げ、朝日軍を退団しました。

1943年12月1日、金沢の東部第49部隊に入隊。翌1944年初頭には幹部候補生試験と特別操縦見習士官試験に合格し、熊谷飛行学校相模教育隊に入隊。その後、館林飛行教育隊に転属。助教からの理不尽な暴力に耐える日々を送りました。1944年8月には鹿児島県の大刀洗飛行学校知覧教育隊へ、同年12月には佐賀県の目達原教育隊に配属。各地を転々としながらも、1945年2月1日には陸軍少尉に任官しました。同年3月上旬、目達原飛行場で開催された部隊内の対抗野球試合では、見事な投球を披露しました。これが彼にとって最後の野球となりました。

1945年3月6日、特攻隊に志願（上官からの指示があったとも言われています）。5月5日には、三重県宇治山田市の陸軍明野飛行場にて「特別攻撃隊第165振武隊」に配属されました。6月6日、爆装した三式戦闘機「飛燕」に乗り込み、知覧飛行場を13時31分に出撃。16時00分頃、沖縄洋上にて連合軍艦船群に突入し戦死しました。「修養録」と題された日誌には、辞世の句として「いざ征かん 雨も風をも 乗越えて 吾れ沖縄の球と砕けん」が記され、絶筆として「野球生活八年間 わが心 鍛へくれにし 野球かな 日本野球団朝日軍 渡辺静」という言葉が残されていました。享年22歳。

東京ドーム敷地内にある鎮魂の碑には、沢村栄治らと共にその名が刻まれています。

詳細情報

年度別打撃成績

（データ省略）

背番号

20（1943年）

参考文献

中島正直『白球にかけた青春 陸軍特攻隊員渡辺静』（櫟、1986年） ISBN 4900408166

関連項目

長野県出身の人物一覧
松竹ロビンスの選手一覧
* 特別攻撃隊

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