特別操縦見習士官

特別操縦見習士官制度の概要

特別操縦見習士官（とくべつそうじゅうみならいしかん）とは、日本陸軍航空において、戦争期における航空機操縦者の短期養成を目的に設立された制度です。この制度は1943年、つまり太平洋戦争の最中に制定され、航空戦力の強化を目指して多くの志願者が獲得されました。特操と略され、当時は「学鷲」とも称され、航空戦における重要な戦力として位置付けられていました。特操制度は通算で4回の採用がありましたが、その背景には激動の時代と切迫した戦局がありました。

制度創設の経緯

1943年6月、日本の内閣総理大臣であり陸軍大臣でもあった東條英機陸軍大将は、パイロットの必要性を強く認識し、航空機操縦者の大量養成を指示しました。この背景には、戦局の厳しさと航空戦略の重要性があり、陸軍は約3000名を1944年3月までに、さらには翌年度末までに2万人という目標を立てていました。このため、陸軍中央は高等教育を受けた「素質優良者」を急募し、大学などから志願者を求めることにしました。

制定と採用実施

1943年7月、特別操縦見習士官の設立に関する勅令が公布され、同年10月には第1期の応募が行われました。この際、陸軍は高等教育機関の卒業生や在学中の者を対象とし、志願者を募りました。その結果、約1200名の採用を目指しましたが、応募者数は予想を大きく上回る約7200名に達しました。これにより、特操制度は設立の初期段階から大きな注目を集めました。

教育内容とその特長

特操制度は、短期間で航空機操縦者を育成することに特化しており、入営から1年6か月を修業期間としていました。しかし、戦局に応じてこの期間はさらに短縮され、特操第1期生は入校からわずか1年で少尉に任官するという速成の実績を残しました。特操は他の操縦者養成制度と異なり、曹長の階級を持つ見習士官としての身分を初めから付与されるという特権もありました。

採用結果とその後の運命

特操制度によって育成された操縦者たちは、教育を受けた後すぐに実戦部隊に配属され、特攻などの任務にも従事しました。彼らは、特攻隊として果敢に戦い、多くの戦死者を出しています。特操第1期から第3期にかけては、特攻に従事した兵士たちのなかに多くの特操出身者が含まれており、戦局の厳しさとともにその数は増大していきました。特操第1期生からは、戦死者が668名にのぼり、特攻隊員としての過酷な運命を経験したことが記録されています。

終戦後の制度の廃止

戦争終結後、特別操縦見習士官制度は廃止されました。1946年にはその根拠となった勅令が廃止され、特操制度自体も歴史の中に消え去りました。特操の制度は、航空戦力の重要性を背景にしたものであり、限られた期間で多くの操縦者を育成した点で、特異な歴史を残しています。各期の出身者たちの中には、戦後に著名な政治家や実業家として活躍した者も含まれています。彼らの生き様は、当時の日本の複雑な事情を映し出す物語の一部でもあります。特操という制度は、航空部隊の歴史とともに忘れ去られることのない存在となっています。

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