渡辺驥

渡辺驥（わたなべ すすむ）

生涯

渡辺驥は、天保7年（1836年）に信濃国松代藩（現在の長野県）で生まれました。幼名は左太郎といい、父は松代藩士で槍術師範を務める渡辺十太夫です。幼少の頃から学問に励み、佐久間象山の門下に入り、久坂玄瑞や中岡慎太郎らと交流を深め、国事を論じました。尊王攘夷運動が盛んになる中、京都に出て岩倉具視の邸宅に身を寄せ、倒幕運動に身を投じました。

戊辰戦争が勃発すると、渡辺は北陸道先鋒総督として、岩倉具視の命を受け諸藩への使者として奔走しました。その後、松代に戻り藩兵を率いて北越戦争や会津戦争を転戦し、新政府軍の勝利に貢献しました。

明治維新後、渡辺は新政府に出仕し、弾正台（現在の検察庁に相当）に勤務しました。弾正少忠に進み、その後、弾正台が廃止されると司法省に移り、少丞兼権大検事、大丞兼大検事、大書記官を歴任しました。1879年には太政官書記官を兼務し、翌年には大審院（現在の最高裁判所に相当）の勅任検事に任ぜられ、元老院議官も兼ねました。1881年には大審院検事長に就任し、1886年までその職を務めました。退官後は元老院議官に専念しました。

1890年、渡辺は貴族院議員に勅選され、亡くなるまで在任しました。同年、元老院が廃止されたため、非職となり、錦鶏間祗候を仰せ付けられました。晩年には、その弁舌が注目を集め、『国会傍聴　議場の奇談』には、その演説の様子が「エヘンの一声、満場為めに静粛」と記されています。

栄典

渡辺驥は、その功績により、以下の位階と勲章を受けています。

位階
1886年（明治19年）11月16日 - 正四位
1894年（明治27年）5月21日 - 正三位
勲章等
1888年（明治21年）5月29日 - 勲二等旭日重光章
1889年（明治22年）11月25日 - 大日本帝国憲法発布記念章

人物

渡辺驥は、幕末の動乱期から明治時代にかけて、激動の時代を駆け抜けた人物です。佐久間象山に学んだ高い見識と、国事に奔走した行動力で、日本の近代化に大きく貢献しました。また、司法官僚としても卓越した能力を発揮し、日本の司法制度の確立に尽力しました。元老院議官や貴族院議員としても、その弁舌で多くの人々を魅了し、日本の政治の発展に貢献しました。

参考資料

佐藤寅太郎 編『信濃人物志』文正社、1922年。
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
* 我部政男・広瀬順晧編『国立公文書館所蔵 勅奏任官履歴原書 下巻』柏書房、1995年。

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