弾正台

弾正台（だんじょうだい）

弾正台は、古代日本の律令制下に設立された官庁であり、主に監察や治安維持の役割を担っていました。これは太政官制に基づいて設立され、当時の中央行政の運営において欠かせない機関の一つでした。弾正台の役割は多岐にわたり、特に風俗の取り締まりや中央政府における不正行為の監視に重きを置いていました。

概要と沿革

弾正台は、中央行政の監視を行い、京内における不正や不適切な行動を取り締まることを主な目的としていました。具体的には、左大臣以下の官吏の不祥事を発見し、奏聞する権限を有していました。しかし、設置当初から太政官に属さない独立した監察機関としての自立性は限られており、実際のところは太政官の支配下で十分な機能を果たせていなかったとされます。このため、裁判権や警察権は主に刑部省や各官司に委ねられており、非違を見つけた際の直接的な逮捕や裁判を行うことはできませんでした。

特に、嵯峨天皇の時代に検非違使という新たな機関が設立されると、弾正台の権限は次第に奪われていき、次第にその実効性が失われていくこととなりました。

長官と官員

弾正台の最高責任者は弾正尹（だんじょうのいん）で、従三位に相当する官職です。時には皇族がこの職に任命され、弾正尹宮と呼ばれることもありました。また、大納言が兼任するケースもあり、尹大納言とも称されました。
弾正台には他にも以下のような四等官が配置されていました：

• - 尹（いん、唐名:御史大夫、御史尚書） - 1名
• - 弼（ひつ、唐名:御史中丞）
• - 大弼（だいひつ） - 1名
• - 少弼（しょうひつ） - 1名
• - 忠（ちゅう、唐名:侍御史）
• - 大忠（だいちゅう） - 1名
• - 少忠（しょうちゅう） - 2名
• - 疏（そ、唐名:御史録事、御史主簿）
• - 大疏（だいそ） - 1名
• - 少疏（しょうそ） - 2名

これらの役職の下には台掌（だいしょう）や巡察弾正といった役割も存在しました。

辞令の例

弾正台に関する辞令の一例として、以下のような内容がありました：
「薩戒記」において、次のように記されています。
従二位行権大納言の藤原朝臣定親が、正二位行権大納言兼陸奥出羽按察使の藤原朝臣公保から「弾正尹を兼任せよ」という勅命を受けたことが記されており、これは1443年6月15日に発令されたものです。
特に中川宮朝彦親王など、歴史的に著名な人物が弾正尹に任命され、尾羽のあたりで弾正宮などと称された例もあります。

弾正を名乗る有名な人物

弾正台の官職を名乗った人物は多数存在しました。朝廷から正式に任命された者もあれば、自称するケースもありました。例えば、源仲国や、幕末に活躍した中川宮朝彦親王が弾正尹に任命されたことは有名です。戦国時代においては、織田信長が「弾正忠」として自らを称した家系として知られ、同様の称号を持った武将たちもいました。特に、松久秀や上杉謙信などがその名を挙げられます。

まとめ

弾正台は古代日本の監察機関として重要な役割を果たし、時代を経る中でその名と権限は変遷しましたが、歴史における影響は決して小さなものではありませんでした。行政機関の監視機能を有することで、当時の社会を維持する一助となったのです。

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