渡部敬太郎

渡部敬太郎：激動の時代を駆け抜けた陸上自衛官

渡部敬太郎（わたなべ けいたろう）は、1927年1月15日に生まれ、1997年11月26日に亡くなった、日本の陸軍軍人、そして陸上自衛官です。彼は、陸上自衛隊初の昭和生まれの幕僚長であり、その生涯は激動の時代と共にありました。

生い立ちと軍歴

福島県相馬中学から仙台陸軍幼年学校に進み、陸軍予科士官学校を卒業しました。陸軍士官学校本科に入校直後に終戦を迎え、軍人としてのキャリアは中断されました。しかし、1950年に警察予備隊に2等警査として入隊し、自衛官としての道を歩み始めました。

ソ連駐在と防衛意識の覚醒

渡部は、在ソビエト日本大使館付防衛駐在官として、ソ連という国、そして共産主義を肌で感じました。この経験から、「自由な日本を守ること」の意義を痛感し、ソ連軍人から受けた侮辱も、彼の防衛意識を一層強くしました。

北部方面隊での活躍

北部方面総監在任中、渡部は「ソ連軍にとっての真善美とは力のみである」と断言し、ソ連の侵略を阻止するために、北部方面隊の実力強化に尽力しました。ソ連極東軍の想定侵入時期に合わせ訓練演習サイクルを変えるなど、実戦的な演習を矢継ぎ早に企画・実施しました。また、北海道内選出の国政・地方両議員団や道民を招き、実弾を用いた「火力戦闘演習」を統裁することで、北部方面隊の実力を国民に広報し、ソ連極東軍への抑止効果を狙いました。さらに、アメリカ陸軍を招いた「北斗演習」では、陸上幕僚長として北部方面隊を統裁し、国際的な連携も視野に入れた演習を行いました。

陸上幕僚長、そして統合幕僚会議議長へ

渡部は、第18代陸上幕僚長、そして第15代統合幕僚会議議長を歴任しました。これは、陸海空自衛隊を通じて初の昭和生まれの幕僚長でした。彼の軍歴は、陸上自衛隊の成長と共にあり、そのリーダーシップは多くの自衛官に影響を与えました。

退官後

1986年に退官後は、日産自動車参与を務めました。1997年4月には、勲二等瑞宝章を受章。同年11月26日に大腸癌のため、東京都文京区内の病院で逝去。享年70歳でした。

渡部敬太郎の略歴

1945年（昭和20年）7月29日：陸軍予科士官学校卒業（第60期）
1950年（昭和25年）10月：警察予備隊入隊（2等警査）
1950年（昭和25年）12月：2等警察士
1965年（昭和40年）1月：2等陸佐昇任
1968年（昭和43年）7月16日：陸上幕僚監部第2部付
1969年（昭和44年）9月16日：外務省に出向（在ソビエト日本大使館付防衛駐在官）
1970年（昭和45年）1月1日：1等陸佐昇任
1972年（昭和47年）11月13日：陸上自衛隊幹部学校研究員
1974年（昭和49年）3月16日：陸上幕僚監部第3部防衛班長
1975年（昭和50年）3月17日：第2普通科連隊長 兼 高田駐とん地司令
1976年（昭和51年）7月1日：陸将補昇任
1976年（昭和51年）8月2日：西部方面総監部幕僚副長
1978年（昭和53年）3月16日：陸上幕僚監部人事部長
1979年（昭和54年）7月1日：陸将昇任、第9代第10師団長
1981年（昭和56年）7月1日：第15代 北部方面総監に就任
1982年（昭和57年）10月：北海道大演習場において、道民1万人を招き「火力戦闘演習」を実施。
1983年（昭和58年）3月16日：第18代 陸上幕僚長に就任、同年「北斗演習」を統裁。
1984年（昭和59年）7月1日：第15代 統合幕僚会議議長に就任
1986年（昭和61年）2月6日：退官。
1997年（平成9年）4月29日：勲二等瑞宝章受章
1997年（平成9年）11月26日：逝去。

栄典

勲二等瑞宝章 - 1997年（平成9年）4月29日

渡部敬太郎は、激動の時代を生き抜き、日本の平和と安全に貢献した、傑出した軍人でした。彼の功績は、後世に語り継がれるべきでしょう。

もう一度検索