渡部直己

渡部直己について

渡部直己（わたなべ なおみ）は、1952年2月26日に東京都に生まれた日本の文芸評論家です。彼は早稲田大学の元教授として知られ、またその著作や批評活動を通じて文学界に多大な影響を与えました。彼の父親は、第18代陸上幕僚長であり、軍に関わった家系に生まれ育った渡部は、学問の道を選びました。

経歴の概要

渡部は1970年代に東京学芸大学附属高等学校を卒業し、その後早稲田大学第一文学部での学びを経て、1976年に大学院文学研究科の修士課程を終了しています。卒業後の1978年には、『早稲田文学』に「露出狂の反逆―マンガテクスト考」という論文を発表し、文芸界での第一歩を踏み出しました。

1980年代には、文芸評論家としての活動を本格化させ、絓秀実と出会い批評研究会に参加。また、1983年には季刊批評誌『杼（ひ）』を創刊し、初著書『幻影の杼機 泉鏡花論』を出版しました。この頃から渡部は、文学と評論の両方でその名を広めるようになります。

文芸活動と顕著な業績

1990年代には、『朝日ジャーナル』での鼎談や文藝春季号での連載を通じ、さらに名声を高めました。1995年には近畿大学文芸学部に教授として就任し、『面談文藝時評』という連載が2000年まで続き、多くの作家や評論家との関わりが生まれました。この連載は後に単行本としても出版されました。

渡部の文学評論のスタイルは、ロラン・バルトや柄谷行人などの影響を受け、視点を多様に持って作品分析を進める特徴があります。また、スポーツへの情熱も強く、野球を題材にしたエッセイや評論も手がけています。その活動は文芸界に留まらず、広範囲にわたる関心を持った作品を生み出しました。

セクシュアルハラスメント問題

しかし、渡部は2018年にセクシュアルハラスメント問題で大学を退職するという事件が発生しました。具体的には、大学院生からの告発を受け、早稲田大学は事実確認の結果、適切な処置を講じました。最終的に渡部は大学から解任され、その後の裁判で賠償命令を受けることになります。これは、文芸界だけでなく、教育界においても重要な問題を引き起こしました。

2023年には東京地裁による判決が下され、渡部は55万円の賠償を命じられたことが報じられました。上記のハラスメント行為が認定され、さらにはその言動が被害者の人格権を侵害したとの判断も下されました。これにより、文学界の権威であった彼の評価にも大きな影響が及んでいます。

人物像と趣味

渡部は多様な影響を受けて育ち、特に秋山駿や金井美恵子といった著名な文芸批評家から強い影響を受けました。また、プロ野球ファンであり、野球への愛情が彼の評論にも色濃く表れています。自身もアマチュア野球を楽しんでいたことがあり、その造詣は深いものがあります。趣味としてはアルトサックス演奏があり、若い頃は音楽活動にも力を入れていたとされます。

作品リスト

彼の主な著作には「幻影の杼機 - 泉鏡花論」や「現代文学の読み方・書かれ方」などがあり、文芸評論だけでなく、作家としても多くの影響力を持ち続けました。彼はまた、共著や編著も多数手掛けており、幅広い文芸分野で活動を続けています。

渡部直己は、文芸批評の重要人物である一方、その私生活や行動が問題視され、葛藤を抱えた難しい人物でもありました。彼の作品や影響は日本文学において今後も語り継がれていくことでしょう。

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