渥美湾

渥美湾の概要

渥美湾（あつみわん）は、愛知県の南部または南東部に位置する、三河湾の東部を占める湾である。渥美半島の先端にある小中山地域と伊川津地域に囲まれたこの湾は、豊かな自然と多様な景観で知られている。免々田川の河口に形成された汽水域は、いくつかの砂州に囲まれ、穏やかな波が広がる空間を提供している。

地理的特徴

渥美湾は三河湾西部の知多湾と対をなしており、知多半島の南端にある羽豆岬と矢作古川河口の西側に位置する生田鼻を結ぶ線が、これら二つの湾の境界を形成している。湾内には竹島や内陸の三ヶ根山といった風光明媚なスポットが存在し、蒲郡市周辺や渥美半島の北岸では多くの海水浴場が利用されている。湾の地形は変化に富んでおり、島や砂浜、岩石の海岸が連なり、波が穏やかなことから、観光客にとって魅力的な場所となっている。また、三河湾国定公園の一部として、自然保護の面でも重要な役割を果たしている。

渥美湾は浅い海盆で構成されており、湾の中央部を東西に横切る中央構造線が地質的な特徴を強調している。この構造線以北の地域は花崗岩が主要な岩石として広がっており、南の姫島では蛇紋岩、竹島や三河大島では片麻状花崗岩が見られる。渥美半島の先端にはかつて西山砂丘が存在し、地域の温暖な気候が知られているが、免々田川河口近くの漁港では、かつて凍結が確認されることもあった。また、渥美湾は独特の海鳴りが聞こえる地域としても知られている。

過去には、1945年に発生したマグニチュード6.8の三河地震や、1953年に起きた台風13号による向山堤防の決壊といった自然災害の影響を受けた湾でもあり、その記憶は地域社会に深く刻まれている。

主な流入河川

渥美湾には、以下の川が流入している：
1. 御津川
2. 音羽川
3. 佐奈川
4. 柳生川
5. 梅田川

ただし、免々田川が渥美湾に流れ込む唯一の河川である。

経済的側面

三河湾の東部は、海抜5メートル以下の浅海が埋め立てられ、工業地帯として発展している。現在、三河湾の海域の約半分が三河港の港域となっており、1964年に重要港湾に指定された。三河港の周辺地域には豊橋市や田原市があり、自動車産業や造船業の工場が立地している。特にトヨタ自動車田原工場やアイシン田原工場、フォルクスワーゲングループジャパンなど、多くの著名な企業がこの地域で事業を展開している。このほか、かつては福江港において造船所が存在し、水中翼船やホバークラフト、豪華客船が運航されていた。

かつて渥美湾の浅海部では黒海苔と青海苔の養殖が盛んで、全国的にも有名な養殖地であったが、1972年に東三河臨海工業地域の埋立が行われたことで、養殖はほとんど行われなくなった。湾内では沿岸漁業が活動しており、小中山漁港近くでは潮干狩り場も人気を集めている。アオサ海苔の養殖は全国でもトップクラスの規模で、渥美ブランドの垂下アサリも名産品として広く知られている。

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