温泉寺 (豊岡市)

温泉寺：城崎温泉を見守る歴史と自然の宝庫

兵庫県豊岡市城崎町の大師山に位置する温泉寺は、城崎温泉郷を見下ろすように建つ、由緒ある高野山真言宗の寺院です。山号は末代山、本尊は十一面観音菩薩で、古くから城崎温泉の守護寺として信仰を集めてきました。

寺伝によれば、温泉寺の開基は天平10年（738年）、城崎温泉の開祖である道智上人によるものと伝えられています。山号と寺号は聖武天皇から賜ったとされ、その歴史の深さを物語っています。

貴重な文化財が織りなす歴史的空間

温泉寺は、数多くの貴重な文化財を有することで知られています。中でも、但馬最古の木造建築物である本堂は、室町時代初期（至徳4年頃、1387年）の建立とされ、国の重要文化財に指定されています。入母屋造、正面五間という堂々とした造りで、和様、禅宗様、大仏様の三様式が融合した独特の建築様式が特徴です。本堂内には、本尊の十一面観音菩薩像をはじめ、多くの仏像が安置されています。

さらに、平安時代末期に制作された「絹本著色十六善神像」、平安時代中期の伝稽文作とされる「木造十一面観音立像」、平安時代後期の「木造千手観音立像」、鎌倉時代末期の「石造宝篋印塔」など、数々の国宝・重要文化財が寺宝として大切に保管されています。これらは、日本の仏教美術史においても重要な位置を占める貴重な作品です。

境内には、本堂以外にも、江戸時代明和期建立の八脚二重門である山門（仁王門）、江戸時代文化期建立の薬師堂、江戸時代中期再建の但馬地方唯一の多宝塔など、歴史を感じさせる建造物が数多く残されています。これらの建造物も、それぞれ独自の趣を持ち、訪れる人々を魅了します。

また、平成22年（2010年）に再建された奥の院や、平成19年（2007年）に建立された慈母観音像など、近年の整備も進められています。境内には、温泉寺参道沿いの古木群が天然記念物に指定されており、豊かな自然も堪能できます。

札所としての役割

温泉寺は、西国薬師四十九霊場第29番札所、但馬西国三十三箇所第33番札所にも指定されており、多くの巡礼者も訪れます。札所として信仰を集める温泉寺は、地域の人々の生活にも深く根付いていることがわかります。

アクセス

JR山陰本線城崎温泉駅から徒歩15分、または全但バスを利用できます。また、城崎温泉ロープウェイを利用すれば、より手軽にアクセスできます。

まとめ

歴史と自然に恵まれた温泉寺は、城崎温泉を訪れた際にはぜひ訪れたい場所です。国宝・重要文化財に指定された数々の仏像や建造物、そして静寂に包まれた境内は、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。城崎温泉の情緒と、温泉寺の荘厳な雰囲気を同時に味わえる、貴重な体験となるはずです。

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