渾身

渾身 (こんしん)

川上健一による小説『渾身』は、2007年8月に集英社から出版されました。この作品は、一度は故郷を捨てた男が、様々な困難や出会いを通じて成長していく姿を描いています。

あらすじ

結婚式をドタキャンして島を飛び出した英明は、妻となる麻理と共に島へ戻る決意をします。閉鎖的な島社会の中で子供を授かりますが、麻理は病に倒れ亡くなってしまいます。英明は、周囲の人々の温かさに支えられ、麻理の親友であった多美子と再婚します。島の人々に少しでも認められたいと、彼は島に伝わる古典相撲に打ち込みます。20年に一度開催される遷宮相撲において、最高位である正三大関に推挙されるまでになります。夜を徹して島中の人々が見守る中、300番にも及ぶ取り組みの最後に、英明は地区の名誉と家族の思いを背負い、土俵へと上がります。

隠岐古典相撲

隠岐古典相撲は、隠岐の島に伝わる相撲の原点とも言える伝統的な相撲です。隠岐は相撲が盛んな土地であり、島をあげての祝い事では、夜通し相撲大会が開催されます。その最上位に位置づけられるのが、出雲大社に次ぐ格式を誇る水若酢神社で20年に一度開催される遷宮相撲です。三重（さんまい）の土俵でとられ、勝負のしこりを残さないように一勝一敗の引き分けで終わるのが特徴です。遷宮相撲は神社のある五箇地区が座元となり、他の地区が寄方となって対抗戦を行います。古式に則り、最高位は正三大関となり、その地位は一生に一度のチャンスであり、誰もが望む名誉あるものです。

書籍情報

単行本：集英社 初版2007年8月 ISBN 978-4-08-774876-5
文庫版：集英社文庫 初版2010年4月 ISBN 978-4-08-746560-0

映画

『渾身 KON-SHIN』として映画化もされています。錦織良成が監督・脚本を務め、伊藤歩と青柳翔が主演を務めました。2013年1月5日に鳥取県及び島根県で先行公開され、同年1月12日に全国公開されました。映画は、家族の絆や地域の熱い思いを通して「日本の心」を描いた感動作品として評価され、第36回モントリオール世界映画祭正式招待作品、第25回東京国際映画祭特別招待作品にも選ばれました。

しかし、製作費約5億2千万円に対し、最終興行収入は1億7610万円にとどまりました。映画を製作した出雲ピクチャーズは、配給元の松竹に対し約4億5千万円の損害賠償を求め提訴しましたが、請求は棄却されています。

キャスト

坂本多美子 - 伊藤歩
坂本英明 - 青柳翔
山本清一 - 甲本雅裕
永見剛 - 笹野高史
中村一千代 - 中村嘉葎雄
大林伸江 - 財前直見
坂本琴世 - 井上華月
吉田忠治 - 長谷川初範
吉野弓子 - 宮崎美子
吉野久成 - 中本賢
坂本麻里 - 中村麻美
田中敏三郎 - 隆大介
田中敏夫 - 粟野史浩
坂本学 - 高橋長英
坂本弘子 - 真行寺君枝
佐々木良一 - 春田純一
佐々木好子 - 松金よね子

スタッフ

監督・脚本：錦織良成
原作：川上健一（集英社文庫刊）
撮影：松島孝助
美術：稲垣尚夫
録音：西岡正巳
照明：吉角荘介
編集：日下部元孝
音楽：長岡成貢
美術協力：蛙男商会
制作プロダクション：goen、ユニークブレインズ
制作：出雲ピクチャーズ
配給：松竹
製作：「渾身」製作委員会

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