遷宮

遷宮とは

遷宮（せんぐう）とは、神社の本殿を造営・修理する際に、ご神体（神様の依り代）を一時的に、または新しい本殿へ移す儀式のことです。本殿が別の場所に新築されたり、同じ境内で位置が変わったりする際に行われます。また、本殿の修理や建て替えの際に、一時的にご神体を仮の建物へ移す場合も遷宮と呼ばれます。

遷宮の種類

遷宮には主に以下の2種類があります。

仮殿遷座：本殿から仮の建物へご神体を移すこと。
本殿遷座：仮の建物から新しい、または修理された本殿へご神体を移すこと。

また、定期的に行われる遷宮を「式年遷宮（しきねんせんぐう）」と呼びます。「式年」とは「定められた年」という意味で、多くの場合は神社の社殿を建て替える際に行われます。特に有名なのは、三重県伊勢市にある伊勢神宮の「神宮式年遷宮」です。式年遷宮は、社殿の建て替えを通じて、氏子の信仰心を再確認し、伝統を継承する重要な意味を持っています。

一方で、天災や人災などにより、予定外に本殿の修繕や建て替えが必要になった場合に行われる遷宮は「臨時遷宮」と呼ばれます。

遷座との違い

遷宮と似た言葉に「遷座（せんざ）」があります。遷座は、本殿の造営や修理を伴わず、ご神体のみを移動させることを指します。また、遷座は仏像（本尊）や天皇の移動にも用いられる言葉です。

古材の活用

遷宮によって解体された古い木材（古材）は、単に廃棄されるのではなく、様々な形で再利用されます。例えば、伊勢神宮の宇治橋の鳥居の一部として使われたり、戦災や災害で被害を受けた神社の再建に使われることがあります。実際に、熱田神宮では、伊勢神宮の式年遷宮で出た古材を譲り受け、社殿を再建した事例があります。また、2013年の伊勢神宮の式年遷宮の古材は、東日本大震災で被害を受けた東北地方の神社復興にも活用される予定です。

式年遷宮を行っている神社

式年遷宮の周期は、それぞれの神社によって異なります。以下に、主な神社とその周期をまとめました。

鹽竈神社（宮城県塩竈市）：20年毎（1704年以降は修理のみ）
穂高神社（長野県安曇野市）：20年毎（現制は江戸時代から）
香良洲神社（三重県津市）：20年毎
伊勢神宮（三重県伊勢市）：20年毎（690年から）
神明神社（三重県志摩市）：20年毎（1764年から）
賀茂別雷神社（上賀茂神社）（京都府京都市）：21年毎
豊受大神社（京都府福知山市）：60年毎（平安時代から）
住吉大社（大阪府大阪市）：20年毎（1810年以降は修理のみ）
天照皇大神宮（福岡県糟屋郡）：20年毎
鳥飼八幡宮（福岡県福岡市中央区）：25年毎

かつては、香取神宮、鹿島神宮、宇佐神宮、春日大社、諏訪大社などでも式年遷宮が行われていました。賀茂御祖神社は21年ごとに行われていましたが、東・西本殿が国宝に指定されたため、現在は一部の修復にとどまっています。春日大社では、ほぼ20年に一度、本殿の位置を変えずに建て替えや修復を行うため、「式年遷宮」ではなく「式年造替」と呼んでいます。

また、出雲大社は、およそ60〜70年毎に本殿の建て替えが行われていますが、必ずしも定期的ではないため、式年遷宮には該当しません。

関連情報

季節遷座：遷座の一例
伊勢神宮式年遷宮 広報本部：公式ウェブサイト


遷宮は、単なる建物の移動ではなく、神社の歴史と信仰を未来へ繋ぐ重要な儀式です。各神社によって異なる周期や形式で受け継がれています。

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