湖広省

湖広省（ここうしょう）とは

湖広省は、かつて中国に存在した行政区域であり、省都は武昌府（現在の湖北省武漢市）に置かれていました。その領域は、現在の湖北省と湖南省に相当します。

概要

「湖広」という名称は、宋・元時代にまで遡るとされています。行政区域としての初出は、元朝が南宋攻略のために1274年（至元11年）に武昌府に設置した湖広等処行中書省（当初は荊湖等処行中書省）とされています。ただし、この時の管轄範囲は、現在の湖北省・湖南省の大部分に加えて、広東省や広西チワン族自治区の一部も含まれていました。

明朝が成立すると、現在の湖北省と湖南省の領域に改められました。1376年（洪武9年）には、湖広等処行中書省に代わって湖広承宣布政使司が武昌府に設置され、以後、湖広省と呼ばれるようになりました。また、1370年（洪武3年）には武昌都衛が設置され、1375年（洪武8年）には湖広行都指揮使司と改称されて武昌に設置されました。

1438年（正統3年）には、湖広巡撫が武昌に設置されました。正徳年間以降は、湖広総督が設置と廃止を繰り返すようになりました（『明史』巻73・職官志二）。清朝は湖広総督と湖広承宣布政使司を設置していましたが、1664年（康熙3年）には布政使が南北に分割され、それぞれ湖北省と湖南省となりました。しかし、湖広総督は引き続き武昌に置かれ、両省を管轄しました。

湖広省の歴史

湖広省は、元代に行中書省が設置されてから、明代には承宣布政使司が置かれ、清代に分割されるまで、中国における重要な行政区画としての役割を果たしました。その中心であった武昌は、政治・経済の中心地として発展し、現在の武漢市の基礎を築きました。

湖広省の歴史を振り返ることは、中国の行政制度の変遷を理解する上で重要な意味を持ちます。特に、元代の行中書省から明代の承宣布政使司、そして清代の省への分割といった変遷は、中国の歴史における行政機構の変化を象徴しています。

まとめ

湖広省は、現在の湖北省と湖南省にあたる地域を包括する行政区画であり、元代から清代にかけてその形を変えながらも存在し続けました。その歴史は、中国の行政制度の変遷を理解する上で不可欠です。

参考文献

黒田壮六「湖広」（『東洋歴史大辞典』平凡社、1937年/縮刷版:臨川書店、1986年）ISBN 978-4-653-01472-0
梅原郁「湖広」（『アジア歴史事典 3』平凡社、1984年）

もう一度検索