湖広総督

湖広総督：清朝における地方統治の要

湖広総督（満洲語：ᡥᡡᡤᡠᠸᠠᠩ ᠨᡳᡠᡥᡝᠷᡞᡣᠠᡩ᠋ᠠᠯᠠᠷᠠᠠᠮᠪᠠᠨ、転写：hūguwang ni uheri kadalara amban）は、清朝時代に設置された地方長官の官職です。現在の湖北省と湖南省にあたる地域を管轄し、その軍事・民政の両面を統括する重要な役割を担っていました。

湖広総督の成立と変遷

湖広総督は、1644年（順治元年）に設置されたのが始まりです。総督府は武昌（現在の武漢市の一部）に置かれ、湖北省と湖南省をその管轄下に収めました。しかし、その歴史は一様ではなく、一時的な廃止や名称変更も経験しています。

1668年（康熙7年）： 湖広総督が一度廃止されます。
1670年（康熙9年）： 再度、湖広総督が設置されます。
1680年（康熙19年）： 川湖総督に改称されますが、同年中に湖広総督の名称に戻されます。
1687年（康熙26年）： 湖北湖南総督に正式に改称されます。この名称変更は、管轄地域をより明確にする意図があったと考えられます。
1904年（光緒30年）： これ以降、湖広総督が湖北巡撫を兼任するようになります。これは、地方行政の効率化を図るための方策であったと考えられます。

湖広総督の役割と重要性

湖広総督は、管轄地域の軍事と民政を統括する責任を負っていました。具体的には、以下のような職務が含まれます。

軍事指揮： 地域内の軍隊を指揮し、治安維持や反乱鎮圧にあたる。
民政管理： 税の徴収、公共事業の監督、訴訟の処理など、地域住民の生活に関わる行政全般を管理する。
皇帝への報告： 地域内の状況を皇帝に報告し、指示を仰ぐ。

湖広総督は、その管轄地域の広さと重要性から、清朝の地方統治において非常に重要な役割を果たしていました。特に、湖北省は長江が流れ、水運の要衝であったため、その治安維持は国家全体の安定にも繋がっていました。

著名な湖広総督

湖広総督の中には、その功績が後世にまで語り継がれる人物も存在します。例えば、林則徐はアヘン戦争前に湖広総督を務め、アヘン密輸の取り締まりを強化しました。彼の強硬な姿勢は、アヘン戦争勃発の一因になったとも言われています。

まとめ

湖広総督は、清朝時代の地方行政を支えた重要な官職であり、その変遷は清朝の統治体制の変化を反映しています。湖北省と湖南省という広大な地域を管轄し、軍事・民政の両面を統括することで、地域の安定と国家の繁栄に貢献しました。

参考資料
* 清史稿 巻一百十六・志九十一 『職官三：外官』

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