湯っ歩の里

湯っ歩の里：日本最大級の足湯施設と温泉の歴史

栃木県那須塩原市、塩原温泉郷の門前温泉に位置する「湯っ歩の里」は、日本最大級の足湯施設として知られています。806年（大同元年）の開湯以来、長い歴史を誇る塩原温泉郷は、明治時代の鉄道開通以降、多くの文人墨客に愛されてきました。しかし、バブル経済崩壊後、観光客の減少や旅館・商店の閉鎖が相次ぎ、温泉街は衰退の危機に瀕していました。

このような状況を受け、塩原町（現・那須塩原市）は2004年、「感じる温泉街再生計画」を策定。その一環として、2006年の開湯1200年を記念した温泉公園の構想が生まれました。2003年からプロポーザル方式で事業が進められ、中心部の廃業した旅館跡地に建設されたのが「湯っ歩の里」です。総事業費約5億3千万円を投じ、2005年7月29に着工、2006年6月30日に竣工、同年8月1日に開業しました。開湯1200年記念事業の主会場として活用され、初年度は計画を上回る来場者数を記録するなど、大きな成功を収めました。現在では、指定管理者制度が導入されており、有限会社塩原アメニティケアと有限会社ビッグウッドによる共同事業体が運営にあたっています。

建物の設計と特徴

「湯っ歩の里」は、東側に流れる箒川に向かって段状に低くなる敷地を最大限に活用した設計が特徴です。西側には駐車場と、塩原温泉の歴史や泉質に関する展示を行う「歩廊」があり、国道400号と塩原街道からアクセスできます。建物は、「歩廊」、「歌仙堂」、「足湯回廊」の3つの主要部分から構成されています。

歌仙堂は2階建てで、木組みの架構が印象的な2層の大屋根を持つ建物です。上階にはエントランスホール、下階には受付やロッカールーム、管理運営施設が配置されています。古くから人々が歌を詠み交わす場として知られる歌仙堂の名を冠し、温泉文化の情報発信拠点としての役割も担っています。

歌仙堂の下階にある受付の先には、楕円形の鏡池を囲むように全長60mの足湯回廊が広がります。回廊の内側には足つぼを刺激する石を敷き詰めた足湯、外側には板張りの通路とベンチが設置され、歩行しながらも、座りながらでも足湯を楽しむことができます。建物の構造は、外部空間との一体感を高めるため、筋交いを極力減らした設計となっています。鏡池では、定期的に温泉霧や間欠泉の演出も行われ、幻想的な雰囲気を演出しています。

足湯回廊の周囲には緩やかな勾配の遊歩道が整備され、飲泉場や、夏目漱石、長塚節、室生犀星といった塩原ゆかりの文人の文学碑・歌碑も設置されています。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉で、足湯に使用されたお湯は鏡池を経て、湯滝に流れ込みます。遊歩道は湯滝の裏側にも通じており、霧状の温泉を浴びることができる空間も提供しています。なお、足湯の利用は有料ですが、庭園や飲泉場は無料で利用できます。

その優れたデザインは高く評価され、2007年度グッドデザイン賞（建築・環境デザイン部門）を受賞しています。

アクセス方法

JR宇都宮線西那須野駅・東北新幹線那須塩原駅からJRバス乗車、「塩原畑下」下車
野岩鉄道上三依塩原温泉口駅から「ゆーバス」乗車、「塩原畑下」、「塩原門前」、または「湯っ歩の里入口」下車
* 東北自動車道西那須野塩原インターチェンジから国道400号で約20km

「湯っ歩の里」は、歴史と自然、そして現代的なデザインが融合した、魅力的な足湯施設です。塩原温泉郷を訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。

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