湯川町 (北海道)

北海道函館市湯川地区の歴史と文化

函館市湯川地区は、かつて北海道亀田郡に存在した湯川町をルーツとする地域です。1939年（昭和14年）に函館市に編入合併されましたが、その歴史は古く、アイヌ文化から明治時代の開拓、そして現代まで、様々な出来事が刻まれた、豊かな土地です。

湯の川温泉と自然環境

湯川地区の中心部には、古くから知られる湯の川温泉があります。海底火山銭亀火山由来と推定されるこの温泉は、当初は治療目的で利用されていましたが、1863年（文久3年）には100℃近い高温の湯が湧出、温泉宿が営まれるなど、次第に発展していきました。地域は松倉川水系と汐泊川水系の流域にあたり、温暖な気候と豊かな自然に恵まれています。西側には函館市街地高台からなる函館段丘があり、その間を鮫川が流れています。

歴史の軌跡：アイヌ文化から函館市編入まで

湯川地区の集落の成立時期は定かではありませんが、文明年間（1469年-1486年）には南部地域からの農民や漁民の移住記録が残っています。1617年（元和3年）には湯倉神社が創建され、1653年（承応2年）には湯の川温泉が開湯したと伝えられています。

明治時代に入ると、上湯川村と下湯川村に分かれていた集落は、1879年（明治12年）に合併。その後、1883年（明治16年）には下湯川村から根崎村が分村し、1902年（明治35年）には上湯川村、下湯川村、亀尾村が合併して湯川村となりました。この時代には、函館区からの交通路の整備が進み、馬車鉄道、そして函館市電の前身となる函館馬車鉄道の敷設によって利便性が向上しました。また、1885年（明治18年）には鮫川で新たな湯脈が発見され、根崎温泉が開業しました。

飲料水確保の問題が、函館市への編入合併の重要な理由の一つとなりました。当時、松倉川上流には鉱山があり、鮫川は流量が少ないため、安定的な水源確保が課題となっていたのです。1939年（昭和14年）4月1日、湯川町は人口10,021人、面積200.54 k㎡をもって函館市に編入合併しました。

地域の産業と文化

湯川地区では古くから漁業が盛んに行われてきました。特に昆布養殖は重要な産業で、明治時代には坂田孫六氏による人工礁の造成によって、昆布養殖が大きく発展しました。昭和天皇即位の大嘗祭には、湯川地区産の昆布が献上されたという記録も残っています。一方、鉱工業も盛んで、亀田鉱山などの小規模鉱山が存在していました。

また、湯川地区には湯川貝塚など貴重な遺跡も残されており、縄文時代から続く歴史を物語っています。さらに、1920年（大正9年）には娯楽場「新世界」が開設され、地域住民の生活を彩る文化施設として賑わいをみせました。

教育と地域社会

1939年の合併当時、湯川地区には高等尋常小学校2校、尋常小学校3校が存在しました。これらの学校は函館市に引き継がれ、現在も地域の子どもたちの教育を担っています。湯川地区は、豊かな自然、歴史、文化、そして温かい人々の交流が織りなす、魅力的な地域です。これからも、その歴史と伝統を守りながら、発展を続けていくことでしょう。

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