湯浅政雄

湯浅 政雄（ゆあさ まさお）

大日本帝国陸軍の軍人であった湯浅 政雄（ゆあさ まさお）は、明治19年（1886年）5月12日にこの世に生を受け、昭和45年（1970年）11月1日にその生涯を閉じました。最終的な階級は陸軍少将でした。

湯浅政雄は、郷里である群馬県に生まれ育ちました。若くして軍人の道を志し、陸軍士官学校に入学。厳しい訓練を経て、栄えある第19期生として卒業しました。

軍歴を重ねた湯浅は、昭和8年（1933年）8月には陸軍歩兵大佐へと昇進しました。この昇進と同時に、彼は久留米連隊区司令官の任に就き、管轄区域における兵役関連業務や予備兵の訓練といった重要な後方支援任務を担いました。その後、昭和10年（1935年）には東京に近い麻布連隊区司令官へと転任し、引き続き要職を歴任しました。

湯浅大佐の軍人としての経歴において特に注目されるのは、昭和11年（1936年）3月8日に歩兵第3連隊長に就任した際の状況です。この部隊は、その直前に発生した二・二六事件において多数の将兵が関与しており、事件後、連隊内部には深い亀裂と混乱、そして強い動揺が広がっていました。部隊としての統制が乱れかねない極めて困難な状況下で、湯浅連隊長は着任しました。彼は、その卓越した指導力と冷静な判断をもって、動揺する将兵たちの心を鎮め、乱れかけた規律を根気強く回復させることに邁進しました。その努力の結果、連隊内の混乱は収拾され、部隊は再びその機能を回復しました。動揺を見事に抑え込んだ後、彼は連隊を率いて満洲への移駐という重要な任務を無事に遂行しました。これは、当時の日本陸軍が直面していた不安定な情勢下における、彼の指揮官としての能力と、困難な状況を乗り越える強靭な意志を示す重要なエピソードとして語られます。

二・二六事件後の難局を乗り越えた功績もあり、湯浅はさらなる昇進を果たしました。昭和12年（1937年）11月1日には陸軍少将に進級し、将官の列に加わりました。その後、彼は第1師団司令部附として勤務しましたが、昭和14年（1939年）3月9日には待命となり、同年3月22日という比較的早い段階で予備役に編入されることとなりました。

一度は軍務から離れた湯浅政雄でしたが、太平洋戦争末期、日本の戦局が厳しさを増す中で、再び国家からの要請を受けます。昭和20年（1945年）3月31日、彼は予備役から召集され、宇都宮連隊区司令官および宇都宮地区司令官を兼任する形で現役に復帰しました。終戦までの間、彼は後方司令官として、地域の防衛計画や兵員補充、訓練などに携わりました。

終戦後、日本の占領行政が進む中で、湯浅政雄は昭和22年（1947年）11月28日、連合国軍総司令部（GHQ）によって公職追放の仮指定を受けることとなりました。これにより、戦後の日本社会における公職に就く道は閉ざされました。

公の場から退いた後、湯浅政雄は静かに晩年を過ごし、昭和45年（1970年）11月1日に84歳でその生涯を終えました。二・二六事件後の混乱期の部隊立て直しや、終戦間際の再召集など、激動の昭和史の一頁に関わった大日本帝国陸軍の将官の一人として、その足跡は記録されています。

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