満韓交換論

満韓交換論について

満韓交換論（まんかんこうかんろん）は、1900年代初頭に日本が提唱した政治思想であり、この概念は日本がロシアと国際的な交渉を行う上で重要な役割を果たしました。基本的な考え方は、ロシア帝国が満洲における権利を持つことを認める一方、日本が朝鮮半島での権利を確保するというものでした。提唱者の伊藤博文はこの論を通じて、日露間の対立を避けつつも日本の影響を強化しようと試みました。

背景

この思想が提唱された背景には、19世紀半ばからロシア帝国が清国に対して強まった圧力がありました。1858年に結ばれた愛琿条約や1860年の北京条約によって、ロシアは極東地域での領土を拡大していきました。これに対し日本は、1895年の日清戦争での勝利にもかかわらず、三国干渉によって遼東半島を清に戻さざるを得なくなり、ロシアの影響力を増大させる要因となりました。特に、1900年の義和団の乱ではロシアが多くの兵を満洲に駐留させ、混乱を理由に撤退しなかったため、日本はこの地域におけるロシアの動きに警戒を強めることとなったのです。

提唱と反応

伊藤博文は、ロシアとの開戦には勝算がないと判断し、日露協商の立場から満韓交換論を提唱しました。この提案は井上馨や松方正義から支持を受けましたが、山縣有朋や桂太郎らは開戦すべきだとの意見を持っていました。彼らは、仮に日露協商が成立しても長続きせず、ロシアがそれを破棄した際に戦争を避けられないと考えていたからです。

満韓交換論の消滅

義和団の乱におけるロシアの行動は、イギリスにも脅威をもたらしました。当時、イギリスはボーア戦争に焦点を当てる一方で極東にも目を向け始め、日本との接近を模索しました。この動きが日英同盟へと繋がり、日本はイギリスの支援を仰ぐことでロシアに対抗する姿勢を強めました。こうした状況の中で、1903年に日本が満韓交換論をロシアに提示しましたが、ロシアはこれを拒否し、逆に朝鮮半島を南北に分けるという提案を行いました。この状況が受け入れられないと判断した日本は、1904年にロシアとの国交を断絶し、満韓交換論は完全に消滅したのでした。

相互補完説

歴史学者千葉功は、「満韓不可分論」と「満韓交換論」の関係を探る中で、日英同盟と日露協商が対立しているのではなく、むしろ相互補完的なものであるとの見解を示しています。この見解は、結果的には開戦に至った背景とも関係しており、満韓交換論が当時の日本外交の一部として重要な役割を担っていたことを示しています。

参考文献

• - 信夫清三郎 編『日本外交史 1853-1972 I』毎日新聞社、1974年10月。
• - 千葉功『旧外交の形成--日本外交 一九〇〇〜一九一九』勁草書房、2008年4月。

関連項目

• - 門戸開放通牒
• - 日英同盟
• - 日露戦争

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