源為憲

源為憲（みなもと の ためのり）

源為憲は、平安時代中期に活躍した貴族であり、文人としても名を残しています。光孝源氏の流れを汲み、美濃権守・源是恒を曾祖父に、筑前守・源忠幹を父に持ちます。官位は正五位下、美濃守に至りました。

経歴

文章生として学問を修めた後、内記、蔵人、式部丞といった官職を歴任。その後、地方官として三河権守、遠江守、美濃守、伊賀守などを務めました。

特に遠江守在任時の功績は、『北山抄』や『吏途指南』にも記録されています。長保元年（999年）には、美濃国で藤原宗忠による殺害事件が発生し、当時の美濃守であった為憲も責任を問われ、一時的に職務停止処分を受けました。明法による解官の建議も出されましたが、翌長保2年（1000年）には以下の理由から赦免されています。

宗忠の刑が減じられ流罪となったこと。
美濃国の民が、為憲の善政により国が復興しているとして、解任に反対したこと。
内裏再建の際、美濃国が担当していた承香殿と北壇の造営が遅延する恐れがあったこと。

しかし、長保2年（1000年）9月には、承香殿の築垣の上に小児の死体が置かれる事件が発生。この事件は7日間の穢れとされ、内裏造営を担当していた為憲が遷宮を遅らせるために行ったという噂も流れました。

人物

源為憲は、源順に師事し、文章、漢詩、和歌に優れた才能を発揮しました。『本朝文粋』には受領申文が、『本朝麗藻』や『類聚句題抄』には漢詩作品が収録されています。また、『拾遺和歌集』には和歌作品も残されています。その他、『口遊』や『世俗諺文』などの教養書も撰述しており、幅広い知識と教養を持っていたことが伺えます。

さらに、仏教にも深く帰依し、『三宝絵詞』や『空也誄』などの著作も残しています。

官歴

長徳3年（997年）8月19日：美濃守に任官
長保4年（1002年）3月26日：前美濃守に転任
寛弘6年（1009年）4月5日：伊賀守に任官
* 寛弘8年（1011年）8月：死去

源為憲は、地方官として手腕を発揮する一方で、文人としても多くの作品を残しました。その生涯は、官吏としての責任と文化人としての才能が交錯する、波乱に満ちたものであったと言えるでしょう。

もう一度検索