滝田良

滝田 良

滝田 良（たきた りょう）は、日本の薬学者。1978年4月に生まれ、有機化学を専門としている。東京大学大学院薬学系研究科にて博士（薬学）の学位を取得後、国内外の主要な研究機関で研鑽を積み、現在は静岡県立大学薬学部および大学院薬学研究院の教授として、教育研究活動に邁進している。

経歴

滝田氏の学歴は、まず国が設置する東京大学薬学部薬学科でスタートした。薬学の基礎を学び、特に触媒化学や有機合成化学の大家である柴崎正勝教授のもとで指導を受ける。2001年3月に同学部を卒業し、学士（薬学）の学位を得た。さらに深い研究を目指し、東京大学大学院薬学系研究科へ進学。修士課程、博士課程においても引き続き柴崎研究室で学び、触媒的な不斉反応や天然物合成に関する高度な知識と技術を習得した。2003年3月に修士課程を修了して修士（薬学）を取得。博士課程では「Catalytic asymmetric alkynylation of carbonyl compounds by an indium(3) catalyst via dual activation of soft pro-nucleophiles and hard electrophiles」と題する研究に取り組み、2006年3月に博士課程を修了し、博士（薬学）の学位を取得した。

博士号取得後、滝田氏は薬学者としてのキャリアを本格的に開始する。2006年4月には、文部科学省所管の独立行政法人である日本学術振興会の海外特別研究員に選ばれ、渡米。マサチューセッツ工科大学（MIT）にて、高分子化学の世界的権威であるティモシー・M・スワージャー教授の研究室で博士研究員として先進的な研究に携わった。

約1年間の海外での経験を経て帰国後、滝田氏は日本の学術研究機関を歴任する。2007年4月には国立大学法人京都大学に採用され、化学研究所の助教に着任。ここでは、高効率な機能性高分子合成法の開発に貢献した。2010年8月には母校である東京大学に戻り、大学院薬学系研究科の助教として内山真伸教授の研究室に加わる。その後、2012年4月には同研究科の講師に昇任し、研究室の中核メンバーとして活躍した。

2014年2月からは、独立行政法人理化学研究所環境資源科学研究センターに活躍の場を移し、副チームリーダーに就任する。ここでも引き続き内山真伸チームリーダーのもとで、村中厚哉氏や青山哲也氏らとともに、独自の有機化学研究を推進した。理化学研究所での研究活動に加え、教育・研究機関の役職も兼任しており、2015年度からは科学技術・学術政策研究所の専門調査員として、科学技術動向の分析にも関与。また、2018年4月からは東京大学大学院薬学系研究科の特任准教授も務めた。

2018年10月からは再び東京大学大学院薬学系研究科が主たる所属となり、准教授に就任。教育と研究の両面で次世代の育成と化学の発展に寄与した。そして2022年7月1日、公立大学法人静岡県立大学薬学部の教授として着任。現在は、医薬品製造化学分野を担当し、吉村文彦教授や稲井誠教授、大内仁志准教授らと協力して、医薬品製造に関わる化学プロセスの教育と研究を推進している。同時に、大学院薬学研究院の教授も兼務し、薬食生命科学総合学府薬科学専攻において医薬品製造化学教室を担当している。

研究活動

滝田氏の研究は、有機化学、特に触媒設計と官能基導入法の開発に焦点を当てている。様々な種類の結合や元素、さらには反応環境を巧みに利用することで、高活性かつ高選択的な分子変換を実現する手法の開発を目指している。これらの革新的な反応開発を通じて、生命科学や物質科学分野への貢献を目指している。学生時代から柴崎研究室で培った触媒的不斉反応や天然物合成の知見、MITでのスワージャー研究室での経験がその基盤となっている。

京都大学時代に高効率的なポリチオフェン合成法を確立した後、東京大学および理化学研究所の内山研究室では、π共役化合物を基盤とした新規反応の開発や、特殊な構造を持つカルボランアニオンの合成に取り組んだ。特に硼素を含む分子の合成法開発においては、当時異例であった硼素アニオンの化学的知見を応用。ボリル亜鉛アート錯体を利用した芳香族硼素化反応や、不飽和結合への立体選択的なジボリル化反応など、多様な硼素官能基をπ共役分子へ位置・化学・立体選択的に導入する画期的な手法を創出した。

また、修飾や合成法がほとんど存在しなかったC1-カルボランアニオン分子についても積極的に研究。その特殊な構造を乗り越え、様々なsp2炭素やsp炭素をカルボランアニオンへ一般性高く導入する手法を世界で初めて開発することに成功した。これらの「πおよびσ共役結合に対する新反応開発と機能創出」に関する一連の研究成果は、有機化学分野における重要な進歩として高く評価されている。

受賞歴・所属学会

その顕著な業績に対し、滝田氏は数々の学術賞を受賞している。特に、上記の研究成果が認められ、2015年3月には公益社団法人日本薬学会より日本薬学会奨励賞が授与された。同年には理化学研究所研究奨励賞、Asian Core Program Lectureship Awardも受賞。さらに「芳香族化合物の未開拓な化学に挑戦する」独創的な研究姿勢が評価され、2017年にはChemist Award BCAを受賞。2018年には国際的な賞であるThieme Chemistry Journal Awardを受賞するなど、国内外でその研究手腕が高く評価されている。

学術団体としては、日本薬学会、日本化学会、有機合成化学協会、高分子学会などに所属し、精力的に研究成果を発表し、学界の発展に貢献している。

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