基

基(Group, Radical)の概念

化学において「基」は、原子の集合体という広い意味を持ちますが、文脈によって複数の異なる概念を指します。本記事では、主に原子団としての基について解説します。原子団は、分子内の共有結合で連結された部分構造であり、「メチル基」など「～基」と命名されます。

基の分類と定義

原子団を説明する際には、文脈に応じて以下の下位概念を使い分けます。これらの概念は必ずしも明確に区別できるわけではなく、重複する部分もあります。

1. 置換基

化合物の系統や命名を考える上で用いられる概念です。単純な構造の母体化合物に対して、異なる部分を置換基として定義します。母体化合物が単独で存在するときには水素原子で占められている位置を、置換基が置き換えたと考えることができます。様々な置換基で置換された化合物を、母体化合物の誘導体と呼びます。

2. 特性基

化合物を形式的に特徴づける原子団です。単独または複数の特性基の組み合わせで官能基を構成します。IUPAC命名法や反応機構の説明などで多く用いられ、通常は化合物の端、つまり1価の原子団として定義され、炭化水素基は含まれません。

3. 官能基

物質の化学的属性や反応性に注目した概念で、固有の物性や反応性を持ちます。化合物の化学的性質を決定づける役割を担います。置換基と異なり、炭化水素基が含まれない場合もありますが、定義には曖昧性があり、置換基とほぼ同義的に用いられることもあります。2価以上の原子団で化合物の内部に位置する結合なども含みます。

シンボル

R: 一般的なプレースホルダー記号で、水素原子や炭化水素基などを表します。「radical」や「residue」に由来し、1844年にシャルル・ジェラールによって使用されました。
X: 多くの場合、ハロゲン化物のような負の電荷を持つ置換基を表します。

ラジカルという呼称

かつて置換基Rは「ラジカル(radical)」と呼ばれていましたが、現在は「置換基」や「基」と呼びます。不対電子を持つ化学種は「フリーラジカル(free radical)」と呼ばれていましたが、現在では単に「ラジカル」と呼び、区別する必要がなくなりました。ただし、歴史的経緯から「フリーラジカル」という言葉を使用する例や、誤用も見られます。

主要な基の一覧

以下に、主な特性基、官能基、置換基を示します。これらの分類は厳密ではなく、重複する部分もあります。

特性基

アルキル (-CnH2n+1)
ハロゲン (-Cl, -Br, -I, -F)
ヒドロキシ (-OH)
アミノ (-NH2)
イミノ (=NH)
N-オキシド (N→O)
N-ヒドロキシ (-NH-OH)
ニトロ (-NO2)
ニトロソ (-NO)
アゾ (-N=N-)
ジアゾ (-N+≡N)
アジド (-N3)
オキシ, エポキシ (-O-)
オキソ (=O)
カルボニル (-CO-)
フェニル
ホスフィノ
チオ (-S-)
S-オキシド (S→O)
チオキシ (=S)

官能基

(特性基を除く主な官能基を記載。例として一部を記載)
ヒドロキシ基
ペルオキシ
ケトン
アシル基
アセチル基
エノール
エナミン
ホルミル基
ベンゾイル基
アセタール
ヘミアセタール
カルボキシ基
エステル
アミド
シアノ
オキシム
チオール
スルフィド
ジ[[スルフィド]]
スルホン酸
ウレア
ウレタン
グアニジン
イソニトリル
アレン
ケテン
ジイミド
イソ[[シアネート]]
イソチオ[[シアネート]]
カルボニル基
アミノ基
イミノ基
シアノ基
アゾ基
アジ基
チオール基
スルホ基
ニトロ基
エーテル結合
エステル結合
アミド結合
ウレタン結合

置換基

(特性基・官能基を除く主な置換基を記載。例として一部を記載)
アルキル基
ビニル基
アリル基
アリール基
フェニル基
アルコキシ基
メトキシ基
エトキシ基

母体化合物

アルカン
アルケン
アルキン
シクロアルカン
アリール
ヘテロアリール
架橋化合物
縮環化合物

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