滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは

滲出性中耳炎（しんしゅつせいちゅうじえん）は、中耳腔という鼓膜の奥にある空間に液体が溜まる病気です。以前は中耳カタルとも呼ばれていました。この病気の特徴は、中耳に滲出液が溜まっているにもかかわらず、耳の痛みや発熱といった急性炎症の症状が見られないことです。

疫学と病態

滲出性中耳炎は、子供と高齢者に多く見られます。特に、就学前のお子さんや小学校低学年の子供の難聴の最も多い原因の一つです。しかし、軽度の難聴以外に症状がないため、見過ごされやすいという特徴があります。多くの場合は10歳までに自然に治癒するため、特に治療が必要ないこともあります。しかし、一部には治りにくく、慢性化する例もあり、まれに真珠腫性中耳炎などの後遺症を引き起こすこともあります。

この病気の根本的な原因は、耳管という中耳と鼻の奥をつなぐ管の働きが悪くなり、中耳腔の中が陰圧になることです。その結果、周囲の組織から液体が滲み出て中耳腔に溜まり、音が聞こえにくくなる伝音性難聴を引き起こします。

耳管の機能が低下する原因は、子供の場合、急性中耳炎や風邪などの上気道炎、アデノイドや扁桃の肥大、副鼻腔炎などが挙げられます。大人の場合は、上咽頭にできる悪性腫瘍が原因となることがあります。また、口唇口蓋裂、ダウン症候群、未熟児などにも合併しやすいことが知られています。

診断と治療

滲出性中耳炎の診断は、中耳腔が陰圧になることで鼓膜が内側にへこむ所見により比較的容易に行うことができます。聴力検査では伝音難聴が見られ、ティンパノメトリーという検査ではB型またはC型の波形を示します。

治療は、基本的に保存的な方法が中心です。中耳腔の陰圧を改善するために、耳管に空気を通す耳管通気という処置が行われます。また、原因となっている感染症やアレルギーに対して薬物療法が行われます。しかし、これらの治療で改善が見られない場合は、鼓膜切開や鼓膜チューブの挿入といった外科的な治療が必要になることもあります。

滲出性中耳炎は、子供によく見られる病気ですが、適切な診断と治療を受けることで、症状を改善させることができます。お子さんの聞こえに不安を感じたら、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

もう一度検索