咽頭

咽頭（いんとう）について

咽頭は、脊索動物に特有の器官で、口腔と食道をつなぐ消化管の一部です。胚の段階では、両側に並んだ咽頭嚢から発生します。咽頭は、発声、呼吸、食物の通過に関与し、気管の入口に位置しています。咽頭と食道の境目は第6頸椎であり、ここから下方に食道が続きます。

発生学的背景

咽頭嚢は、消化管の内壁が側方へ萎縮してできたポケット状の構造です。この構造は、尾索動物や頭索動物の幼生、そして一部の両生類成体で「えら穴（鰓裂）」として知られる部分に開通します。これにより、ガス交換が行われ、食物を濾過する機能を担います。これらの機構は、血液を酸素で飽和させるために進化してきました。

今日でも、尾索動物のホヤやサルパ、頭索動物のナメクジウオ、脊椎動物のヤツメウナギの幼生では、この原始的な構造が保たれています。一方で、硬骨魚類や軟骨魚類では咽頭が濾過摂食を行っており、これは鰓弓に付属する鰓耙と呼ばれる突起が主な役割を果たします。

空気呼吸をする脊椎動物の中で、成ては鰓弁も見られなくなり、咽頭嚢は成長と共に退化します。この過程で、内柱は甲状腺として発展し、代謝調節といった重要な役割を果たします。特に哺乳類の咽頭は、鼻腔、口腔、喉頭と密接に結びついており、呼吸と食物通過の重要な交差点として機能します。

解剖学

咽頭は大きく「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の三つに分けられます。

上咽頭

上咽頭は鼻腔に続く部分で、鼻咽腔とも呼ばれます。ここには耳管の開口部があり、耳と咽頭を接続しています。この部分にアデノイドが存在し、増殖すると耳管を圧迫し、難聴を引き起こすことがあります。また、風邪による炎症が中[[耳]]に波及すると中[[耳]]炎の原因となります。上咽頭に発生する腫瘍には、上咽頭癌や肉腫があり、特定の地域で多く見られます。

中咽頭

中咽頭は口を開けることで直接見える部分で、ここは消化管と呼吸器の機能を併せ持っています。この部位には扁桃が存在し、風邪によって容易に炎症を引き起こします。急性咽頭炎と慢性咽頭炎に分けられ、急性では発熱や咽頭の痛みが見られ、慢性の場合は違和感を訴えることが多いです。治療は原疾患の治療に重点を置き、局所治療が行われます。

下咽頭

下咽頭は咽頭の最下部に位置し、喉頭の後方にあります。ここから消化管が始まり、炎症が慢性化しやすい部位であり、異物がひっかかりやすい場所でもあります。また、下咽頭には梨状窩と呼ばれる空間があり、ここに悪性[[腫瘍]]ができることもあります。近年では、咽頭結核が少なくなった一方で、性感染症としての淋菌性咽頭炎が増加しています。

咽頭に関する理解は、耳鼻咽喉科の分野で非常に重要であり、各部位の健康状態や機能が全身に与える影響を把握することが必要とされます。

もう一度検索