漏刻博士

漏刻博士（ろうこくはかせ）

漏刻博士は、古代日本の律令制において、陰陽寮に属した博士の一種です。「ときつかさ」とも訓じられ、唐の制度では司辰や契壷司に相当します。定員は2名で、必要に応じて権官が置かれることもありました。位階は従七位下相当とされますが、実際には五位や六位の者が任じられる例も見られました。

職務内容

漏刻博士の主な職務は、漏刻を管理し、正確な時刻を計ることでした。彼らは、仕丁から選抜された守辰丁（20名）を率い、漏刻を警備するとともに、時刻を計っていました。そして、定刻になると守辰丁に命じて、陰陽寮内に設置された鐘を打たせ、時を知らせました。天皇の行幸の際には、漏刻博士1名と守辰丁12名が漏刻とともに随行する義務がありました。

唐との制度の違い

唐にも漏刻博士の官職は存在しましたが、その職務内容は日本とは異なっていました。唐では、漏刻の実務は挈壺正、司辰、漏刻典事が担当し、漏刻博士は漏刻生を教育することが主な役割でした。一方、日本では、挈壺正、司辰、漏刻典事といった官職は設けられず、漏刻博士がこれらの実務を担いました。また、漏刻生を育成する制度も存在しなかったため、漏刻博士は教育の職務を負うことはありませんでした。この点は、実務と学生の教育の両方を担当した天文博士や暦博士とは大きく異なる点です。

職の変遷

漏刻の技術は比較的早い段階で途絶えたとされ、院政期になると、漏刻博士の官職は、賀茂朝臣氏や安倍氏の一族、または彼らが推薦する門人のためのものとなっていきました。菅野季親や季長のように、漏刻ではなく年筮（占いの一種）の達人が漏刻博士に任じられた例もあります。また、大宰府や陸奥国（後に出羽国も追加）にも漏刻が設置されましたが、これらの地では博士は置かれず、守辰丁が管理を担当していました。

漏刻博士は、古代日本の時間管理において重要な役割を担った官職でしたが、技術の衰退とともにその職務も形骸化していったと考えられます。

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