賀茂朝臣氏

賀茂朝臣氏について

賀茂朝臣氏（かものあそんうじ）は、日本の古代氏族のひとつであり、賀茂（かも）を氏名とし、朝臣（あそん）を姓としています。大鴨積命（おおかもつみのみこと）を始祖とし、三輪系の氏族に分類されます。大鴨積命の伝承によると、彼は大物主神（三輪明神）の子、または後裔である大田田根子の孫とされています。また、『先代旧事本紀』によれば、彼は速須佐之男命の11世の孫でもあります。賀茂朝臣氏の本貫は奈良県御所市の「鴨」の地であり、ここには高鴨神社や鴨都波神社、葛木御歳神社などがあります。

大鴨積命はその地域に祖神である事代主神を祀るために鴨都波神社を建立し、その功績から「鴨君」という姓を賜りました。現在、鴨の地にある神社の祭神としては、阿遅志貴高日子根命（迦毛之大御神）や積羽八重事代主命が挙げられ、これらは賀茂氏の祖神であるとされています。

初期の表記として「鴨君」や「甘茂君」があり、姓は君でした。しかし、壬申の乱において功績を上げた賀茂蝦夷が登場し、天武天皇13年（684年）に「賀茂朝臣」の姓を与えられました。この背景には、奈良時代から平安時代初期にかけての朝廷施策が影響しています。特に奈良時代には「高賀茂朝臣」の姓を持つ者も見られ、彼らは官吏として朝廷に貢献しました。

平安時代中期に入ると、賀茂氏は陰陽道の分野でも名を馳せ、賀茂忠行や賀茂保憲といった著名な一族を輩出しました。忠行の弟子である安倍晴明は特に有名で、彼らは陰陽道の宗家としての地位を確立しました。賀茂忠行の子には儒学者へと転身した慶滋保胤が、保憲の子には賀茂光栄がいます。光栄は家業の暦道を継承し、後に影響力を持つことになります。

室町時代に入ると、賀茂朝臣氏の嫡流は勘解由小路家を名乗り、堂上家として陰陽頭を代々務めました。しかし、戦国時代から江戸時代初期にかけては断絶の運命を辿りました。一方、庶流の幸徳井家は江戸時代にも生存し、初期には陰陽頭を務めましたが、陽道宗家の地位を安倍氏系の土御門泰福に奪われてしまいます。以降、幸徳井家は江戸時代中期には陰陽寮の次官である陰陽助としての役割を担いました。

歴史的に見た賀茂朝臣氏は、その名の通り、神を祀ることから神社管理や神事に従事し、特に陰陽道において重要な役割を果たしました。氏族の繁栄と影響力の背景には、時代ごとの社会情勢や文化的な要因が大きく関与していることが分かります。彼らの系譜や文化的な伝統は、日本の古代史において重要な位置を占めており、後世に多くの影響を与えました。

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