暦博士

暦博士（れきはかせ）について

暦博士は、日本の古代律令制において重要な役職であり、中務省陰陽寮に所属していました。彼らの主な任務は、毎年の暦の作成や改暦、さらには日食などの天文現象の予測、そして若い者への暦の教育でした。この役職には基本的には1名が定員でしたが、後に権官が追加され、合計で2名が任じられることもありました。官職は従七位上に相当しましたが、後世においては五位以上が一般的な習慣となっていたことが特徴です。

暦博士という呼称については和訓では「こよみのはかせ」と表現され、唐名では「司暦」や「司暦正保」と呼ばれました。

暦博士の起源

『日本書紀』によると、暦博士の存在は欽明天皇14年（553年）の記録にまで遡ります。この年、百済から暦博士を日本に派遣してほしいとの要請がありました。この要請は、新羅との緊張関係の影響下で、日本が百済に対して軍事支援を行っている中でのことでした。百済は、日本からの支援が続くことを望んでおり、その見返りとして暦博士を送ることを求めたと考えられています。しかし、実際には、百済からの派遣により暦の作成が行われる一方で、暦学の伝授には至らなかったとの見解があります。

その後、暦の制度自体は観勒が暦学を日本に伝えた後に整備されることになりました。

職田と人事

延[[暦]]10年（791年）、暦博士のための職田が設定され、古くは主に渡来系の人物にこの職が任じられていました。その後、大春日氏や家原氏、大中臣氏、賀茂朝臣氏などの一族が世襲を重ねていきました。特に清和天皇の時代には、五紀暦や宣明[[暦]]の導入を主張した大春日真野麻呂や、大衍暦を持ち帰った吉備真備の子孫である賀茂忠行が知られています。

忠行の息子である賀茂保憲は暦博士と天文博士の両方の役割を果たすことになりますが、彼の死後はその息子である賀茂光栄が暦道を受け継ぎ、かつての門人である安倍晴明の子孫が天文道を継承しました。

また、暦書の私的所持が厳しく制限されていたことにより、朝廷外での人材確保が困難となっていました。そのため、平将門が自らを「新皇」と称し、文武百官を任じた際にも暦博士を任命することはできませんでした。このように、吉野朝廷（南朝）においても暦博士は設置されなかったため、その元号が記された具注暦は存在しません。

幸徳井家との関系

後には賀茂家の嫡流が途絶えたため、庶流である幸徳井友景が陰陽頭とされ、さらにその孫である友傳以後は、幸徳井家が暦博士の官職を世襲するようになりました。しかし、陰陽道においては土御門家が、暦学については幕府天文方が影響力を持つようになったため、幸徳井家は暦注に専念することとなります。

明治維新による陰陽寮の廃止に伴って、暦博士の職も廃止され、さらに太陽[[暦]]への改暦が行われることで、その役割は完全に終了しました。このように、暦博士は日本の歴史の中で重要な役割を果たしながらも、時代の変遷と共にその役割が変わっていったことがわかります。

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